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[ISIS festa] 永山薫×山本直樹×松岡正剛 第二回DONDEN祭レポート

2018年11月22日(木)、編集工学研究所のブックサロン本楼にて、ISIS FESTA 第二回DONDEN祭「赤と青 快楽ミームが伝播する」が開催された。メインゲストは『BLUE』と『レッド』が代表作の漫画家・山本直樹さん、ガイド役を『エロマンガ・スタディーズ』の著者である批評家の永山薫さんが務めた。
 
編集学校では守破離を修め、多くのブックウェアプロジェクトに携わってきた金宗代が司会・進行をにない、冒頭でイベント概要を解説した。DONDENとは、昨年、松岡正剛校長がプロデュースした近畿大学の新図書館ビブリオシアター2Fに位置するマンガ・新書・文庫で構成された図書空間をさす。DONDEN祭は、漫画家をゲストに招き、マンガ・新書・文庫を三冊セットで読む”DONDEN読み”を主軸としたイベントである。今年3月にはブックサロン本楼にて第一回「うしろの正面だあれ」(ゲスト:近藤ようこ、安藤礼二が開催された。
 
初回のメインゲストである近藤ようこさんは今回、お客さんとして参加。そのほか客席には、ダーティ松本さん、早見純さんら漫画家、気鋭のマンガ研究家であり編集者の稀見理都さん、地下アイドルの姫乃たまさんなど異能者たちがひそかに顔を揃えた。

 
第一幕では、永山薫さんがミニ講義「エロマンガ・スタディーズ」を披露。「DONDEN祭の出演は “二重の里帰り”である」と語り始めた。じつは、永山さんは近畿大学の卒業生で、かつ松岡正剛が雑誌『遊』の編集長だった頃に開催していた遊塾の元塾生であり、松岡とは40年ぶりの再会となった。自身のジェンダーに関するフラジャイルな告白から『エロマンガ・スタディーズ』を執筆するキッカケ、そしてその内容を目次を追うようにして超高速で解説していった。

 
つづいて、山本直樹さんが登壇。DONDEN祭のために用意した太田出版のウェブコミックで連載中の「田舎」の原稿をもとに、メモ書きからペン入れまでどのように描き入れていくのか、山本直樹流マンガ編集術を詳細にレクチャー。DONDEN祭のシンボルツールである巨大な布スクリーン “DEN帳” に映し出された美しくも粘液性のきわだったエロティックな描画に観客一同がしばし茫然とながめるひと時もあった。メモから完成まで一貫してデジタルで描く理由について山本さんは「完成まですべて自分でやりたいからだ」と語った。
 

フェスタ鼎談

左)松岡正剛 中)山本直樹氏 右)永山薫氏


 

 
メインコーナーである「DONDEN読み」では、来場者の投稿作品を紹介。DONDENの選書メンバーでもある堀江純一さんは『BLUE AND OTHER SHORT PIECE増補新装版』(復刊ドットコム)、『「世間」とは何か』(講談社現代新書)、『共同幻想論』(角川ソフィア文庫)をつなぎ、登場人物の人数が2人から3人に変わる “2プラス1”の瞬間に注意のカーソルをフレーミングし、『BLUE』のいっけん極めて私的に見える物語がじつは “日本的世間”とも言うべき国家社会の深層を映し出していると説いた。それに対して、山本さんは「人数は物語をつくる大事なポイントであり、マンガを学んだ劇画村塾でもやはり3人という数が物語を展開する基礎になると教えられた」とコメントした。

 

山本直樹さんの大ファンである大野哲子さんは、『明日また電話するよ』(イースト・プレス)、『[新訳]方丈記』(PHP研究所)、『ありてなければ 「無常」の日本精神史』(角川ソフィア文庫)の三間連結で「山本直樹は無常である」と喝破。作品のエンディングについて「ただほんの少し、ホクロのような跡を残して」とあらわし、その表現力は、とうの作者である山本さん、松岡正剛も唸らせた。

 

永山さんと山本さんは、『レッド』(講談社)をそれぞれ、『臨済録』と『論理哲学論考』(ヴィトゲンシュタイン)という洋の東西における最高峰の言語哲学と結んだ。山本さんは「言葉をふくめてフィクションだと思っている」と自身の言語観を明かした。さらに「スポーツはフィクションそのもの。それが怪我をしたり、事件が起こると急に現実に引き戻される。この転倒はいったい何なのか」と、アメフトのタックル事件などさまざまな例示を挙げながら、現実とフィクションの境界に対して日常的に大きな関心を払っていることを述べた。

 

 

 

 

最後の鼎談では、松岡正剛も登壇。三者とも大の煙草好きのため、”深夜枠限定”で特別に灰皿を設置。煙が舞いつつ、すこし妖しい雰囲気に包まれながら喫煙談義がスタートした。山本さん、永山さんの「読書系統樹」をもとに、読書遍歴や本のフェチ、また読書の悩みもざっくばらんに交わし合った。「昔は大好きだったフィクションがまったく読めない」という山本さんの悩みに対し、松岡は「自分もそういう時代があったが、古典が効いた。ぜひ古典を読むといい」と処方した。

 


 

 

終盤にかけて、本の話題から山本さんが強く関心を寄せる<現実-フィクション>へとテーマを移行した。松岡は、蕪村の句「凧(いかのぼり)きのふの空のありどころ」を例に挙げて、『擬』(春秋社)で論じた「ほんと」と「つもり」の哲学を案内した。最後は、山本さんが描画においても “粘膜”的な境界にフェティッシュをもっていることを指摘し、「独自の粘膜思想をさらに深化させていってほしい」と期待の言葉を投げかけた。
(END)

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