エディットツアー
無料の編集力チェック

ISIS People

編集する人々

  • 出版×編集

    プロの編集者がなぜ「編集」を学ぶのか

    株式会社アルク編集者 『ENGLISH JOURNAL』元編集長
    『ナイン・インタビューズ 柴田元幸と9人の作家たち』企画編集

    白川雅敏

    アルクという語学書をつくる出版社で編集者をしています。イシス編集学校に入門したのは2015年の春のことです。イシス編集学校主催の「イシスフェスタ」というイベントに作家の赤坂真理さんが出演した回があって、それに参加したのがきっかけです。

     

    ■「編集力チェック」の衝撃

    イシスフェスタには実は赤坂真理さんご本人に招待していただいたんです。少し話が長くなるので、詳しい経緯については遊刊エディストのインタビューをご覧ください。

    それにしても、イベントでの松岡正剛校長の博識ぶりには衝撃を受けました。出版業界にいるので、もちろん松岡正剛の超人的な凄さはそれとなく知っていましたが、リアルの姿は圧倒的でした。
    でも正直、受講料が安くはないので、即入門というわけにはいきませんでした。そこで、まず無料の「編集力チェック」をやってみました。
    すると、返ってきた指南にこれまたびっくりしました。師範代はいわば「赤ペン先生」のようなものなのかなと思っていたのですが、予想を遥かに超える指南が返ってきました。これはもうやらねば、と思って2015年、基本コース[守]に入門しました。

     

    ■ぜったい大変だけどどうして楽しそうなんだ?

    [守]入門に続けて応用コース[破]世界読書奥義伝11季[離]を修了しました。
    その後、師範代養成コース[花伝所]を経て、2017年に39[守]・39[破]の師範代(「全部らくだ教室」)として登板し、さらに師範を6期、番匠を1期、花伝師範を2期務めました。
    なぜそこまで編集学校にハマったのかを簡単にお話します。まず[守]に入門すると、教室に10人ほどの学衆がいて、お題が配信され、当然、学衆によって、それぞれ回答は違うわけですが、それに対して、師範代がとっても楽しそうに真夜中に指南を返していたんです。
    「これ、ぜったい大変だけど、どうしてそんな楽しそうなんだ?」と、その秘密を知りたくなったのです。
    それから、イシスフェスタで本楼に行ったとき、あの世界観にやられました。
    入門してみると、やっぱり校長の世界観が知りたくなって、世界読書奥義伝[離]を目指すことにしました。

     

    ■「ナイン・インタビューズ」の作り方

    本業では、イシスに入門した2015年はマネジメントを担当していました。いまはまた編集の仕事に戻ってきました。最近は、TOEICや共通テストなど試験対策の本を作ることが多いです。その前は『ENGLISH JOURNAL』という雑誌の編集長をしたりしていました。
    まさに「編集」の仕事をしながら編集学校に通っていたわけですが、もし学衆だけで終わっていたら、イシスで学んだことはあまり仕事に思います。師範代になってから、いや、師範になってはじめてお題の深さや意味がわかってきました。学んでいるうちに、自分が本や雑誌を作るときに使ってきた方法を、言葉にできるようになってきたんです。

    私が企画編集した『ナイン・インタビューズ』という本は、イシスに入るまえに手掛けたものですが、これも編集方法を使って作ったものなんだということを今は自信を持っていうことができます。
    たとえば「ナイン・インタビューズ」というタイトルは、サリンジャーの短編集『ナインストーリーズ』に肖ったものです。
    「柴田元幸」「ナイン・インタビューズ」というキーワードを見ると、英米文学好きなら「ははーん、英米文学に関する9つのインタビューを集めたものね」「僕らに向けた本なのね」と連想するはずなんです。
    このように当時、いろいろ工夫したことを、編集術を学んだ今なら振り返って言語化することができるようになりました。

     

    ■編集は遊びから生まれる

    マネジメントを経て編集の現場に戻ったので、いまは若手を育てることも仕事の一つになっています。そのとき、編集学校で学んだことがとても役に立っています。編集の方法を言葉で説明する機会がけっこう多くて、編集学校で習った《見立て》とか《一種合成》なんていう言葉を使うと、伝えわりすいんです。

    松岡校長は「編集は遊びから生まれる」とよく話しています。その意味で、僕にとって本を作るっていうのは「遊び」なんです。
    小学生のころから「学級新聞」をつくったりするのが好きでしたし、いっしょに仕事をしている人には「白川さん、子どもみたいですよね」ってよく言われます。ものづくりって大変なんですけど、それでも苦労して作って、それを誰かが面白がってくれるのってすごく幸せなことです。
    編集学校に携わっている人も、みんな遊んでいる感じがするじゃないですか。だから僕はイシスが好きなんだと思いますね。

     

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  • 寄付×編集

    編集で磨くNPOの発信力

    非営利組織評価センター業務執行理事
    NPO支援

    山田泰久

    私は非営利組織評価センター(JCNE)という団体で、NPOの組織評価をしています。NPO団体を支援する仕事です。NPO法人は、当事者や支援者の方に自分の団体を知ってもらう必要があります。発信力がなければ、活動が成り立ちません。イシス編集学校の「編集」というキーワードを聞いたとき、これは発信力強化に使えそうだなと感じました。

     

    ■物事を多面的に見る方法

    実際に学んでみると、想像以上の威力がありました。編集術は文章を書くための方法だと思っていたんですが、まったく違いました。アウトプットの方法だけでなく、インプットの方法から一気通貫して学べることに驚きました。NPOではつねに「当事者から」「支援者から」など視点を変えながら社会問題を見る必要があるのですが、稽古を通して物事を多面的に見る方法が身につきました。

     

    ■教室の仲間から学ぶこと

    多面的なものの見方が身についてきたなと感じたのは、[守]に入門してから2カ月ほど経った頃です。受講する前は、編集学校では学ぶことを「稽古」と呼んでいるので、師範代である先生と生徒である学衆のマンツーマンの稽古のようなものを想像していたのですが、実際は教室に10名程度の仲間がいて、その人たちのそれぞれの回答を見ているだけで、多様な視点を得られました。ぼくの教室には、主婦の方もいれば広告代理店で働いている方もいました。人それぞれにそれぞれの人生があって、まったく視点が違うんだなということがありありとわかったんです。

     

    ■メールの書き方が上手くなる

    編集コーチ養成講座[花伝所]の学びも仕事に直結しました。例えば、メールの書き方が明らかにうまくなりましたね。花伝所では相手の言葉を「受け止める」ということをまず教わります。その人がなぜこういう思考に至ったのか、なぜそのような見方をするのか、コミュニケーションの方法を深く学ぶんです。それが身につくと、たとえば仕事で「寄付集めについてどんな方法があるのか知りたい」というメール相談を受けたとき、「この人はどれくらいの知識をもっているんだろう?」「この人は何をいちばん求めているんだろう?」などと相手の状態を察して、お返事ができるわけです。

    それ以前は、相手の言うことを受け止めるという意識がなくて誤解が生じることもありました。でも、編集学校で学んでからは、顔の見えない相手とメールベースでやりとりすることが格段にスムーズになりました。

     

    ■SNS発信でも活きる編集術

    また、SNSを使って不特定多数に発信することも多いのですが、そのやり方も洗練されたと思います。週に3日、NPO団体向けにセミナーを開催していた時期があって、その告知文を作るときにはつねに編集術を意識していました。例えば、セミナーのタイトルがキャッチーじゃないと当然関心を持ってもらえないわけですが、そこで活用したのが《編集思考素》や《ネーミング編集術》など基本コース[守]で学んだ方法です。記事本文を書くときも文節を意識するようになりました。[守]では、センテンスを分解して並び替えることで意味を変えてしまうという「バナナと魯山人」というお題があります。そのお題を意識することで、伝わりやすい文章が書けるようになった気がしています。

     

    ■NPOと編集の近さ

    そもそもNPOの活動自体がかなり編集に近いと思います。というのも、NPOの役割は、社会のなかで困っている人と応援したい人をつなぐことにあります。編集というのは、つなぐこと、関係づけることです。それはこれまでは行政が担ってきたことですが、いまはNPOへの期待が高まっています。また、コロナ禍を経て、言葉を使って発信することの重要性も大きく高まっていると思います。

     

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  • 投資×編集

    投資とは「指南」である

    株式会社アルバクロス代表取締役
    ベンチャーキャピタリスト

    鈴木亮太

    私は長らく投資業務に携わってきました。2015年からみずほ証券プリンシパルインベストメント代表取締役を務め、2021年に株式会社アルバクロスを創業しました。イシス編集学校への入門は、前例のない仕事を任されたことがきっかけでした。

     

    ■未知の仕事で成果を上げるために

    イシス編集学校へ入門した当時、私は興銀証券(現みずほ証券)で働いていました。2000年にコンサルティングファームなどと合弁で投資会社を作ることになり、そのような未知の仕事を現場サイドとして担当するときに、どうやったら仕事の成果が上げられるのかを考えていたのです。そのとき、松岡正剛校長の著書『知の編集工学』に出会いました。

     

    ■編集工学の型とフレームワークの違い

    まず、入門して2ヶ月目に学ぶ《編集思考素》にハマりました。編集思考素では、たとえば《三間連結》など3つの情報を扱う型を学ぶのですが、これを知ったとき、これまで仕事で抱えていた「気持ち悪さ」の原因が初めて理解できました。

    仕事では「この会社の長所を3つ挙げよう」などというとき、メンバーの挙げてくる項目のレイヤーが揃わなくて気になっていました。それを指摘しても「それって趣味の問題ですよね」と片付けられてしまうのですが、編集工学として体系立てて学ぶと、レイヤーが揃っていないというのは、たとえば「《情報の地》がズレている」とか「《フィルター》が異なっている」などと説明がつくことがわかりました。

     

    ■師範代のような仕事仲間がほしい

    また、仕事をしていて、「チームに師範代がいたらな」とよく思います。前期49[守]で師範を務めて、そこには2つの理由があることがわかりました。

    ひとつめは、コミュニケーションの潤滑油として役割です。師範代は、師範と学衆のあいだをつなぎます。組織でもいくつかの階層のあいだや、内部と外部をつなぐことができる人がとても重要です。これは効率的に組織をまわす役割ですが、師範代はそれだけではないのがすごいところです。もうひとつ、創発を促すという役割が師範代にはあります。大事なのは、このふたつが両立していることです。

     

    ■投資とは「南」を失わないこと

    編集学校では「指南」という言葉を使いますが、仕事で大切なこともまさに「南」を見失わないことです。私は投資の仕事に長らく携わってきました。そこで、若いメンバーが「これに投資したいです」と提案をもってくることがあります。そのときに私がかならず尋ねるのは「そのビジネス、好きなの?」ということです。するとたいてい、「……儲かると思いますよ」というわけです。

    投資というのは、過去の情報を整理して、未来で成果を得るビジネスです。未来には何が起こるかわかりません。そしてたいてい、ろくでもないことが起こります(笑)。そういうときに、儲かることだけしか考えていないとギブアップしてしまいます。でも、「自分はこういう理由でこれが好きだ」とか「これは社会に残すべき仕事だ」と思えたら逆境でも踏ん張れるわけです。

     

    ■社長業でも活きる編集術

    代表に就任してからも編集稽古が活きたと感じられることが大きく2つありました。ひとつは、さきほど師範代としての方法でもお話したとおり、《エディティング・モデルの交換》が意識的にできたことです。

    私が社長を務めていたときは、社員は全員外部採用でした。つまり、全員が新人時代に異なる社会人教育を受けていることになります。このように、まったくバックグラウンドが違う人たちをひとつの組織に束ねることが、もし師範代としての経験がなかったら、難しかったのではないかなと思います。

    もうひとつ、応用コース[破]の4ヶ月目に学んだ《プランニング編集術》の経験も役に立ちました。社長として、新しい分野にも挑戦したのですが、それを親会社に説明するときなど、《よもがせわほり》というプランニングの型を意識することで、説得力ある説明ができました。

     

    ■リベラルアーツを学ぶ場として

    今は東大の研究室のアドバイザーとしても仕事をしています。最近の学生は社会課題に対して敏感で、彼らを後押ししていくことは社会変革につながると考えています。

    私は工学部の学生を相手にすることが多いのですが、日本の工学部には、高専から編入してくる学生もいます。彼らは中学校を卒業した15歳から20歳まで、5年間みっちり実地で鍛えられているので、かなりポテンシャルが高いんです。ただし、大学で一般教養を学んでいないことに悩んでいたりもします。そんな彼らに情報を自在に動かすためのリベラルアーツを学ぶ場として、イシス編集学校が関わっていく未来もおもしろいと思います。

    TEXT:金宗代

     

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