2010.4.15   [レポート]
No.12『中国の青い鳥―シノロジー雑草譜』川島陽子さん

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メーテルリンクの童話「青い鳥」は幸せを招く鳥として描かれていたが、中国に伝えられる青い鳥もまた、現世と彼岸を往来する魅惑的な象徴であった。現在、イシス編集学校の世界読書奥義伝[離]の指導陣として活躍する川島陽子さんも、“青い鳥”に導かれた一人である。

川島 陽子さん 6期[守] 西宮この鳴る教室 師範代

(ソフトウェア制作会社勤務/兵庫県)
ISIS編集学校略歴:4期[守][破]学衆、6期[守][破]師範代、[守]師範、オリベ編集学校師範代、花伝所花伝師範、2季[離]学衆、風韻講座第三座 学衆、[離]右筆


松岡正剛校長から川島陽子さんへの先達文庫
『中国の青い鳥―シノロジー雑草譜』
中野 美代子著 平凡社

【あらすじ】天空の色を身にまとい、現世と彼岸を行き来する青い鳥とはいったい何なのか。星座と色彩、人参果、女人国伝説、『シナ図説誌』など、中国史の周辺を彩る数々の魅惑的な事物を自在にめぐるエッセイ。


 

少 し 先 の 言 葉


初めて師範代をしたのは2002年のことで、当時の私の本の読み方や言葉との向き合い方は今よりずっと幼いものでした。先達文庫をいただいた時、本の内容も希代の中国文学者である著者のことも受け入れる力がなく、最初のページに書かれた松岡校長の言葉だけがこの本の道標でした。

「言葉の青い鳥を求めて
よくぞ指南してくれました。
卒門への導きを記念して
ここではちょっと
シノワズリーム。」

言葉と青い鳥とシノワズリーム。接点を見つけることのできない言葉の並び。今思えば、このメッセージを受け取った瞬間から、イシス編集学校と私との本当の関係が始まったようでした。以来、情報編集という考え方を理解しようするものの、理屈以上のものに手が届かないもどかしい日々を過ごしていました。転機となったのは2006年の[離](イシス編集学校 専門コース 世界読書奥義伝)の受講。このときから、だんだんかのメッセージの意味を大きな流れの中で読み解いていけるようになっていきました。

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尾崎翠全集は、守学衆時代に師範代からいただいた先達文庫

本書によれば、中国の古書には、西王母の伝達の使者として青い鳥と三本足のカラスが記録されているとのこと。著者は何冊もの書を並べて読み解くうちに、青い鳥とは三本足のカラスのことだったのではないかと考えます。そして、「青い鳥が黒だとは!」と述べると、謎解きの目を古代中国の色彩事情へと転向させていきます。そこには、生命力を秘めた黒を他の黒と区別するための青色がある一方、黒と青を厳格に区別する四神の例が登場します。読んでいる私は、もはや一つの答えを求める気持ちを忘れ、悠久の知にたゆたう著者の目を楽しむようになっていきます。

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「何度見てもうれしいメッセージ 」と川島さん

青い鳥が空へ飛び立ったとき、人の目には鳥が空の青へ溶けていくように見えたのではないか。素朴な現実だが、その視覚効果の感動を古代人は言葉にしたのだろうと著者は想像します。
その文章には、身に感じたままを伝えようとした古代人の言葉がまことしやかな物語となっていく過程がはっきりと浮かび上がり、私の目に、神話の世界を説明する中野美代子氏の言葉運びがクローズアップされてきました。そのとき、これが、本の内容と著者に、読み手である私が同調していく面白さなのだと分かりました。

あらためて校長のメッセージを読み返すと、指南する私の目に同調して青い鳥を探す校長の姿が現れてきました。なんて楽しそう。その姿は、指南の巧拙といったことには意味がなく、むしろあらゆる形の指南と向き合うことがイシス編集学校にとって意味があることを教えてくれています。

当時、先達文庫をきょとんとして受け取った記憶があります。でもそれはいつものことなのです。校長の言葉はいつも少し先にあるからです。そこに青い鳥が飛んでいるのです。

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転機となった2季[離]の退院式より(2006年)

(文・川島陽子)