松岡正剛の千夜千冊
Thousand NIghts for Thousand Books
WEB上に公開されている「千夜千冊」は、2000年の連載開始から現在に至るまで1800を超える、松岡正剛による古今東西のブックナビゲーションサイトです。イシス編集学校で学ぶ編集の背景にある知の一部を、ご紹介します。
イシス編集学校では、千夜千冊が編集術や編集工学と重ねて、コーチ陣だけでなく教室の中で共読されています。生命に学び、歴史を展き、文化と遊ぶ。イシスでの学びは「知」と「方法」が常に両輪になっていきます。
「編集の冒険」へ
勇気が湧く
小学生の俳句に驚き、語呂合わせに遊ぶ。枕草子の「つくし」、ユーミンの「かろみ」、外骨の「諧謔」に学ぶ。「編集の骨法」は、情報を乗りかえ、持ちかえ、着がえをすること。それでも才能が開花しないとお悩みの諸兄は、まず『無名時代の私』を読まれたい。
- ●子どもたちの見事な俳句編集。
0362夜 金子兜太・あらきみほ『小学生の俳句歳時記』 - ●感覚と美意識の編集稽古。
0419夜 清少納言『枕草子』 - ●頓知と滑稽の編集王。
0712夜 吉野孝雄『宮武外骨』 - ●丁々発止、 言葉編集の連打。
0779夜 高柳蕗子『はじめちょろちょなかぱっぱ』 - ●チャンスはいつでも「藪から棒」 。
1292夜 文藝春秋編『無名時代の私』 - ●時代だって編集できる。
1583夜 酒井順子『ユーミンの罪/オリーブの罠』
諸君は、いま、そのとき、その場においての試行錯誤をもっと適確に感じるべきだ。
ー1292夜 『無名時代の私』
編集稽古の
サブテキストを読む
[守]の編集稽古では、ペレックの分類自由、クノーの文体自在に遊ぶ。傍らには『角川類語辞典』を携え、シソーラスの海に泳ぎ出す。[守]を卒門すれば次は[破]。「書けそうもないことを書くのだ」というディラードに「書く」ことを学び、ジョセフ・キャンベルの英雄伝説の型をつかい「物語」を翻案する。
- ●ひとつの出来事を99通りにモード編集。
0138夜 レイモン・クノー『文体練習』 - ●編集稽古的な実験に満ちた本。
0504夜 ジョルジュ・ペレック『考える/分類する』 - ●英雄伝説の型を発見した物語編集術のバイブル。
0704夜 ジョセフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』 - ●切れ味極上、文章指南。
0717夜 アニー・ディラード『本を書く』 - ●類語での言い換えが文章をつくる。
0775夜 大野晋・浜西正人『角川類語辞典』
出来事やイメージや現象や事物は、つねに言い換えや読み替えや書き換えの渦中にある。
ー138夜 レイモン ・クノー『文体練習』
日本する。編集する。
イシス編集学校には、編集コーチである師範代を養成する「ISIS花伝所」がある。世阿弥の『風姿花伝』に肖っている。師範代は学衆の思考の「型」を取りだして、その方法を評価し、不足を伝える。師範代の「却来」とは、編集術を究めたものが、すうっと下におりて方法を手渡すことをいう。
- ●異例の人が「いき」の存在学を吐露していく。
0689夜 九鬼周造『「いき」の構造』 - ●縞に踊りに茶の湯に武道に、型がある。
1100夜 安田武『型の日本文化』 - ●序破急は拍子であって、守破離は筋目なのだ。
1252夜 藤原稜三『守破離の思想』 - ●師範代の方法は「却来」である。
1508夜 西平直『世阿弥の稽古哲学』 - ●「育つ」と「育てる」とではまったく違う。
1561夜 小川三夫『棟梁』
編集は「不揃いの木」を使いこなすことなのである。
ー1561夜 小川三夫『棟梁』
組織・学校・社会のモデルを考える
創造力ではなくて想像力。新しい社会のモデルは界隈のクラブやコーヒーハウス、愛妾たちのサロン、江戸の私塾から羽ばたいていった。before・afterやゴール設定ばかりを気にする学びにあきたらなければ、イシス編集学校の門を叩かれたい。そこには21世紀の夜学もコーヒーハウスも息づいている。
- ●関係を主語に、情報を述語にする「学習の三段階」。
0446夜 グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学』 - ●新聞も政党も広告も会社も、ここから生まれた。
0491夜 小林章夫『コーヒーハウス』 - ●聖徳太子の世から、夜に学んでいた。
0759夜 上田利男『夜学』 - ●本気のコミュニティを創りたい。
1237夜 ジグムント・バウマン『コミュニティ』 - ●SNS時代に、界隈の文化が蘇る。
1502夜 守屋毅、高橋秀元ほか『サロンとクラブ』 - ●物語と対概念で想像の翼を広げる。
1540夜 キエラン・イーガン『想像力を触発する教育』
本気のコミュニティをつくれなくて、何が社会改革なの?何が「絆」なの?
ー1237夜 ジグムント・バウマン『コミュニティ』
編集工学の
背景を渡る
TEDの創設者であるリチャード・ソウル・ワーマンは「編集は理解の本質である」と言っている。ワーマンが重視する「インストラクション」は思考の構造物を相手に伝えるということ。その背景には3つのAであるアフォーダンス、アナロジー、アブダクションが動いている。
- ●思考は割れ目からできている。
0452夜 マーヴィン・ミンスキー『心の社会』 - ●システムには「見方」が含まれている。
1230夜 ジェラルド・ワインバーグ『一般システム思考入門』 - ●世界の半分は「インストラクション」で成り立っている。
1296夜 リチャード・ワーマン『理解の秘密』 - ●万人の、万人による、万人のための模倣!
1318夜 ガブリエル・タルド『模倣の法則』 - ●私と自分のあいだには、重大な遅れやずれがある。
1509夜 ノーレットランダーシュ『ユーザーイリュージョン』 - ●新しいアイデアを導く仮説形成の術、アブダクション。
1566夜 米盛裕二『アブダクション』
新たな打開や発見に向かうには、「ゆきづまり」を辞さない仮説領域に入ってみる必要がある。
-1556夜 米盛裕二『アブダクション』
贈与と互酬の
文化を知る
資本主義社会では、金銭の貸借だけが突出した価値をもってきたが、本来人間はつねに金勘定できない借りで生きている。贈与文化やソーシャル・キャピタルが別様の交換社会のヒントになるだろう。イシス編集学校の編集稽古では、お題・回答指南のなかに互酬文化が息づいている。
- ●フラジャイルで、誰かの役にたちたい生き物。
0326夜 ルイス・トマス『人間というこわれやすい種』 - ●村落的で編集的な「方法の個人主義」へ。
1393夜 アジット・ダースグプタ『ガンディーの経済学』 - ●BSやPLに書きこめない経済力がある。
1478夜 稲葉陽二編『ソーシャルキャピタルの潜在力』 - ●お歳暮や結納は、古代の贈与社会とつながっている。
1507夜 マルセル・モース『贈与論』 - ●借りを返さなくていい社会を提案する。
1542夜 ナタリー・サルトゥー=ラジュ『借りの哲学』
日本は相手や他者を取り入れることにおいても、すぐれて編集的だったのである。
-1507夜 マルセル・モース『贈与論』
世界読書で
共読する
世界をいかに読み、いかに理解するか。その可能性はわたしたちの前に多様に広がっている。ことばが生まれる前の古代から、アルス・コンビナトリアを構想した中世、電子空間での再編集が望まれる現代まで。世界読書奥義伝[離]では必読の6冊。
- ●人間はその思考を実現することができるようにつくられている。
0381夜 アンドレ・ルロワ=グーラン『身ぶりと言葉』 - ●世界もわれわれも、非連続の連続だ。
0995夜 A・N・ホワイトヘッド『過程と実在』 - ●スペインを「世界」にした物語。
1181夜 ミゲル・デ・セルバンテス『ドン・キホーテ』 - ●記憶と書物をめぐるアルス・コンビナトリア。
1314夜 メアリー・カラザース『記憶術と書物』 - ●知の社会は、共読コミュニティに移転されるべきだ。
1493夜 ピーター・バーク『知識の社会史』 - ●世界をどのように読むことができるのか。
1519夜 ハンス・ブルーメンベルク『世界の読解可能性』
言葉を使い尽くしたほうがいい。そうしたら、囚われていた主題から解放される。
-995夜 A・N・ホワイトヘッド『過程と実在』