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『知の編集術』
発行◎講談社
著者◎松岡正剛
価格◎800円(税別)
『知の編集術』
発行◎講談社
著者◎松岡正剛
価格◎800円(税別)
はじめに 知の愉快・方法の冒険
- 第一章 編集は誰にでもできる
- 通訳名人と編集名人
- 文化と文脈を編集する
- 句読点を動かしてみる
- 「情報の様子」に目をつける
- 会話の中にあらわれている編集術
- 小説の中の会話
- 乱世をどう編集していくか
- 関係を発見するために
THEME
「21世紀は方法の時代である」。第一章では主題の時代から方法の時代への転換が高らかに宣言される。その「方法」とは「編集」「編集術」「編集工学」である。まずは、文化や文脈のなかの情報の様子に、いかに注意深くなるかが、会話の事例を中心に開示されていく。
PICK UP!【編集稽古01】
どこかに、こんな文章が掲げられていたとする。これに句読点を打って、二つの意味をもつ文脈にしてほしい。
A ここではきものをぬいでください
B いやよして
- 第二章 編集は遊びから生まれる
- 子供の遊びにひそむ編集
- 子供の極意=「ごっこ」「しりとり」「宝さがし」
- よく遊び・よく学び・よく編集せよ
- カイヨワの「遊び」の四分類
- スポーツ・ルールの編集術
- 法という編集の世界
- 堅い法律、柔らかい法律
- コンパイルとエディットのちがい
- 編集的連続性に注目する
THEME
日本の子どもの遊びから、スポーツのルールまで。遊びとは編集そのものであって、編集のない遊びはなく遊びのない編集もない。遊びのなかで動く「自己編集性」と「相互編集性」、日常の編集的連続性に着目して、「編集する自己」を浮かび上がらせるコツを示す。
PICK UP!【編集稽古05】
サッカーやラグビーにはオフサイドというルールがある。このルールはスポーツ史上きわめて画期的なルールで、ずる(安易な得点)ができないようになっている。また、それによって守備側の戦略もしだいに精巧になってきた(オフサイド・トラップなど)。では、このようなオフサイドに似たルールは、スポーツ以外の社会や慣習のなかにもあるだろうか。考えてみてほしい。
- 第三章 要約編集と連想編集
- 映画編集を体験する
- 要約と連想の魔法
- キーノート・エディティング入門
- 「箇条書き」という方法
- 編集にもモードやファッションがある
- 「らしさ」のショーアップ
- 略図的原型をみつける
- 情報の分母と分子
- 要約編集のための多様な技法
THEME
要約と連想の二つはいろいろなジャンルにつかわれる編集術の基本である。文章や映像の編集だけではなく、会話にも読書にもアクションにも要約と連想は連動して駆動する。その手法として要約ではキーノートなどの多彩なモード、連想では情報の分母と分子を動かすことに言及する。
PICK UP!【編集稽古09】
次の二つずつの項目のちがいを三つずつあげてみてほしい。半分できたらそうとうな情報編集力の持主である。
三内丸山遺跡と吉野ヶ里遺跡 ユダヤ教とキリスト教 法華経と華厳経 源氏と平家 ニスと漆 カントとヘーゲル チーズと納豆 ゴアとマカオ ボストンとニューヨーク 北斎と広重 ジョイスとジェイムズ 与謝野晶子と平塚らいてう チリとアルゼンチン コーヒーハウスとカフェ 三井と三菱 メッテルニヒとビスマルク 美濃と飛騨 尺貫法とメートル法 ポール・ポワレとココ・シャネル 三万都市と十万都市 桂離宮と東照宮 港町と里村 毛沢東と蒋介石 スラブ語とドイツ語 電話と放送 ラグビーとサッカー 巨人と中日 イッセイとヨウジ 東大と京大 ウランとプルトニウム 証券と債券
- 第四章 編集技法のパレード
- 剣道と「鳴らぬ先の鐘」
- 連想ゲームにひそむもの
- 情報はひとりでいられない
- 「いいかえ」が思想をかたどっていく
- 十二の編集用法にとりくむ
- めくるめく六十四編集技法の世界
THEME
情報はつねに乗りかえている。情報はつねに着がえている。情報はつねに持ちかえている。メディア、モード、アナロジーが動きつづけていることをまとめていえば、「情報はひとりでいられない」ということだ。第四章ではイシス編集学校の編集稽古でも取り組む十二の編集用法、六十四の編集技法が紹介されている。
PICK UP!【編集稽古10】
ここに一個のガラスの「コップ」がある。それをいろいろ言い替えてみてほしい。連想ゲームではなく、一人で「いいかえ」をするのだ。できれば二、三十の同義性をおもいつきたい。ただし「コップ」がもつイメージ・サークルからはずれてはいけない。ヒントはコップの分母や特徴や使用法をおもうことである。
- 第五章 編集を彩る人々
- 武満徹のエディターシップ
- 編集名人たちの職人芸
- そこに「方法の魂」はあるか
- 知のテイストと情報コンディション
- 私の好きな読書法
- 文字のクセが表現を変える
- 注意のカーソルをハイパーリンクさせる
- 情報のライフサイクル
- 「編集八段錦」の不思議
THEME
作曲家の武満徹、デザイナーの田中一光、建築家の磯崎新。雑誌編集者、演劇演出家、落語家やお笑い芸人、実況中継のアナウンサー。そこには編集名人たちの編集技法が光っている。彼らの方法を取り出しながら、松岡自身の読書法、編集手順としての十二段階の活用方法、編集の完成にいたるまでを分節化した八段錦を詳述する。
PICK UP!【編集稽古14】
高橋睦郎『百人一句』(中公新書)をつかっての稽古。ここに著者が選んだ百句から五つを選んでおいた。著者がどのような評をしているのか、実際に本にあたって確認してみてほしい。
かからでもありにしものを春霞
良岑よしかたの女
花に来て雪に忘るゝ家路かな
十仏法師
かたまつて薄き光の菫かな
水巴
あなたなる夜雨の葛のあなたかな
不器男
草二本だけ生えてゐる 時間
赤黄男
- 第六章 編集指南・編集稽古
- 一日の出来事を書き出してみる
- コピーライターになってみる
- ジョージ・ルーカスの定番プロット
- 俳句マスキング・エクササイズ
- 速読術に王道はあるか
- 情報を推理してみる
- 記号上手はノート上手
- 手話にひそむ編集力
- これからの編集文化
THEME
編集力はどのようにして鍛錬、錬磨できるのか。物語技法、俳句手法、ノーティングを検証し、松岡流編集エクササイズが連打されていく。個別の実践、トレーニングが心許ない諸兄には、イシス編集学校のめっぽう面白い編集稽古で発想、思考を生み出す技法に磨きをかけてもらいたい。
PICK UP!【編集稽古16】
何人かで組んでやるのがよい。きのう一日の出来事を思い出し、これをポストイットに書きこんでみるのである。何枚になってもよいが、できあがったら、それをお互いに交感し、自分の編集のしかた、友人の編集の「くせ」を感じること。