
輪読座コース
日本哲学シリーズ
輪読座「幸田露伴を読む」のご案内
- 日 時
全日程 13:00〜18:00
2023年4月30日(日)
2023年5月28日(日)
2023年6月25日(日)
2023年7月30日(日)
2023年8月27日(日)
2023年9月24日(日)
難読古典を輪読し、図象解読する
イシス唯一のリアル読書講座
イシス唯一のリアル読書講座
難読といわれる日本の古典。古事記・日本書紀、万葉集にはじまり、聖徳太子、空海、閑吟集、三浦梅園、西田幾太郎、折口信夫、井筒俊彦、南方熊楠など。輪読師である高橋のナビゲーションのもと、輪読し、図解していきます。
輪読師・高橋秀元は、松岡正剛と共に工作舎を立ち上げ、オブジェマガジン『遊』を世に送り出してきたコアメンバーの一人。松岡が「学者10人力」という博覧強記の編集者です。日本の神々について独特の解読を進め、観念の技術をめぐり執筆を続ける一方、出版や日本文化・観光・都市の研究、地域振興や文化施設などのプランに携わっています。
輪読座では、予習や前提知識も必要ありません。図象(ずしょう)と呼ぶ高橋が構成した“概念曼荼羅”を介し、お互いに声を出しながら輪読する事で解読力が自然とついていきます。
古典の歴史、概念の前提を
輪読師・高橋が図象で徹底解読
声を出す輪読と輪読師解説で
難読古典も通読できる
図象ワークを通して自ら解読し、
伝える力を養いアウトプットする
日本哲学シリーズ
輪読座「幸田露伴を読む」のご案内

2023年4月に始まる輪読座は、「幸田露伴を読む」です。どうして、今、幸田露伴〈1867~1947〉を読むのか。露伴は明治維新期に青年時代を過ごし、第二次世界大戦後まで生きた。いわば大日本帝国の形成期からその滅亡時までを体験しています。その間、西欧化による大国化を目指す大日本帝国の文学・学術に対し、一貫して「編集としての日本」を考究し続けたのが露伴です。昭和に入ってからは、21世紀の日本人ために書いたかとも思われる示唆を多く残しています。
現今までに論じられてきた露伴観とは異なる、露伴の全体像をまるごと把握し、21世紀の日本に生きる人間の重要な資源にできる全六回に編集しました。
輪読座「幸田露伴を読む」のスケジュール
第1回 幸田露伴、「未来の文体」を抱えて登場
明治文学の大半が湯島図書館で『燕石十種』〈風俗・人情・奇事異聞を絵入りで解説した奇書:1863完結〉を書写していた淡島寒月〈1829~1926〉から、庶民の言葉で江戸文学を創始した西鶴を学んだ学生たちの中から興隆。その中に尾崎紅葉、幸田露伴がいた。紅葉門下に小栗風葉・柳川春葉・徳田秋声・泉鏡花ら数十名が現れ、近代日本文学の草創期を形成した。幸田露伴は、この潮流に間を取り、人間は誰であろうと、「諸法実相」〈ブッダが覚知した真実の姿〉を感知する機能を備えているにちがいないとし、それはどんなに堕落し、恋の迷路にさまよっていようと、日本人だろうと、アイヌの女性であろうと、精神の極限状態に出現するとして『一刹那』を著した。さらに仏師が「諸法実相」に至る階梯を描いた『風流仏』、釈迦がいかなる事態に対決して「諸法実相」に至ったかを描く『毒朱唇』、「諸法実相」に向かわない西欧化を進める世情・政情の混乱を描く『混世魔風』を連打して文壇に登場。これら3作とともに、寒月死去後に記した『淡島寒月氏』、露伴が一時は参加した根岸党に見切りをつけて書いた『当世外道の面』を輪読する。『偶得二則』と『将来の文体』は、滅多に披露されない露伴の露伴による露伴の文学に対する方針を示している。
『淡島寒月氏』『偶得二則』『将来の文体』『一刹那』『風流仏』『毒朱唇』『混世魔風』『当世外道の面』
第2回 日本の技芸の進化を「風流」に見出す
露伴は『風流仏』で「風流」を日本の技芸が男女の情愛を超えて「諸法実相」に至る精神向上の階梯としたが、その仏法的枠組を超えて「風流」が働いていることに気づいた。そのはみだした動態を「風流」とするようになる。「風流」は唐の白居易が「琴・詩・酒・妓」とし、平安貴族は「音楽・詩文・酒宴・恋愛」を悟達の道とした。これを逸脱するバサラ〈過差〉が中世の「風流」となる。そこに禅が加わって「ワビ」「サビ」へ、さらに江戸の「身体・容姿・擬態」〈色体〉へのはみだしが「風流」となる。
『風流魔』では、名古屋の細工問屋鶴屋の娘お浜が細工物師平七との仲を、横恋慕した金乗や鶴屋の商敵、江戸の藤屋の暗躍で割かれる。心ならずも藤屋に奉公させられ、処女から毒婦になろうと一念発起して老艶魔から男たらしの術を習う。平七はお浜への未練を断とうと藤屋で細工に集中するあまり盲目となる。こういった二人の所業は「風流」であって、そこに救済はあるのかを問うた。『風流魔』と対に書いたのが『呵風流』で、「呵」は「呵責」というように「極限に追い込むこと」でもある。『呵風流』は、後に題を変えて『二日物語』となった。これは西行が鳥羽院の妃・待賢門院(崇徳天皇の母)と一夜の契りを交わしたことに材をとる。讃岐白峯に流された崇徳院の亡霊との対論と捨て去った妻との対論が織りなされている。露伴は「風流」を「文芸・技芸・芸能」の伝承・発展のいわば契機を誘発する動因とし、そこに悟道が開けるとした。こうした「風流」の考察中に『五重塔』が書かれたわけである。これは1644年に完成した谷中感応寺五重塔建造をフィクションとしたものであるが、単に巨大台風に倒れない日本の建築技術を賛美する物語ではない。数々の小さな風流が渦巻き、それらが大きな風流となって出現したのが感応寺五重塔であったという観点から読むとどうなるか、輪読して確かめていただきたい。
『風流魔』『二日物語』『五重塔』『風流問』『般若心経第二義注』
第3回 西欧自然主義に抗して、東洋自然主義を打ち出す
露伴は日・漢・インドの人物に関する多くの史伝を著している。それらは正史から口碑まで、あらゆる断片情報を取り込み、認識された人物像を描き出そうとしている。それらは実像〈史実のみで構築された人間像〉というよりフィクションというべきであろうが、露伴はそこにこそ実像を超える真像=エディトリアリティがあると考えた。これは森鴎外の史伝と好対照をなす。
こうした露伴史伝の中の佳作『プラクリチ』を輪読する。露伴は余市時代に曹洞宗永全寺の東開和尚から『首楞厳経』を手渡された。その中にコーサラ国祗陀林精舎(祇園)に釈迦が説法した時、アーナンダ(阿難)に恋してしまった美女プラクリチ(摩登伽)の愛の苦悩と救済が説かれていた。露伴はプラクリチが登場するあらゆる仏典から情報を集め、プラクリチの真像を再構築。そこに「愛の破壊力」と「愛の建設力」を見出した。露伴はこうした女性の愛の力が次世代を生み出し続け、破壊と建設を推進しながら連なり、環を形成して日本編集の動因となってきたとする『連環記』を著した。これは人間を「遺伝・環境・時代」の3要素でとらえたゾラの膨大な『ルーゴン・マッカール叢書』に対する東洋自然主義の嚆矢として、21世紀日本文学に受け継がれるべきものである。
『プラクリチ』『連環記』
第4回 支那小説研究による小説『運命』
明治41年〈1908〉、京都帝国大学初代学長の狩野亨吉は、幸田露伴を国文学講座講師に、内藤湖南を東洋学講座講師に招いた。露伴の講義は日本文脈論(日本文体史:曾我物語・和讃・近世世話浄瑠璃の文体論)で、学生に好評であったが、翌年の夏休みに東京に帰って、「京都は山ばかりで釣ができない…」などと言って京都大学に戻らなかった。
その翌年の1910年、露伴は『万葉集』への道教の影響を論じた『遊仙窟』で文学博士となる。露伴はアンリ・マスペロと並ぶ近代道教研究の開始者であって、同時に忘れられていた『墨子』を研究し世に紹介した。そのためか、露伴は終生、国を守っても外国を攻めないという非戦論を貫いた。ここでは、漢文学が日本文学の編集に与えた影響を論じた『支那小説』の「支那文学と日本文学との交渉」、『墨子』、道教を解説した『道教に就いて』を輪読し、さらに明の建文帝が叔父の燕王(後の永楽帝)のクーデタで敗れ、生き延びて遊行の僧となったという伝説を描いた『運命』を輪読する。帝位を奪われて流謫の僧となった建文帝と帝位を奪って永楽帝となった燕王の運命や、いかに…。それは、中華文明における露伴流の「風流」であった。
『支那小説』より「支那文学と日本文学との交渉」、『墨子』『道教に就いて』『運命』
第5回 人間向上の原理としての「快楽」
幸田露伴は人間進化・精神向上の原理を追及しつづけた。西欧伝来の民族差別・弱者差別、文明対立に向かう社会進化論に対し、大正元年に書き始め、昭和14年に完結した『努力論』〈文明進化論〉、大正4年から5年にかけて「實業之世界」などに連載した『快楽論』〈個人向上論〉がある。『努力論』は東洋の気学・仏教自然学を基礎に、西欧の自然科学・人間の生理学等を融合し、自然と人間の間におこる様々な作用に対する「努力の集積」を文明進化の原理とした。これに対し、『快楽論』は動物の快楽から人間の快楽への転換を重視し、個々の人間の快楽の向上こそが人類進歩の原理であるとしている。
その最終段階が「快不快の超越」であり、「愉快の前」であることは日本の顕密仏教哲学の近代的発露とみなされる。露伴自身の文学変遷、学問進化の体験に基づく露伴哲学の中枢を占めるものになっている。第二次大戦後、『努力論』はよく読まれたが、欧米化した日本の知識人・学者にこれを揶揄する者も多かった。『快楽論』に至ってはほとんど話題にもなっていない。『快楽論』は、露伴が生涯を振り返ってその会得した哲学を表明する『修察録』を、「人間的快楽」を編集軸に圧縮編集したもので、輪読座では、この『快楽論』をできるだけ多く輪読し、その個人向上論を共有したい。
『快楽論』(緒論・物質的愉快と精神的愉快の意義・人間の進歩と快楽の向上・快楽の真味は過去と未来にあり・自由の想像境の快楽・色声香味触の快楽・愉快と教育・人間性の愉快と動物性の愉快・準備の楽しみ・独立の愉快・大に至るの愉快・無愉快の愉快・我を拡むるの愉快・快不快の超越・愉快の前)
第6回 幸田露伴が未来の日本人に託した事
『蝸牛庵聯話』は、昭和13年から書き始め、昭和18年に刊行された。西欧由来の民俗学〈自国民族の日常生活文化史:folklore studies〉や民族学〈近代を形成した西欧諸国が非近代諸国・民族の文化・社会を研究:ethnology〉を離れ、東洋の国家・民族間交流による文化ネットワークをあぶり出し、それが東洋文明の発展を支えてきたことを示そうとしたものである。短文を連ねた多岐にわたる「聯話」から成り、そこに文化編集ネットワークを論証する方法が伏在している。
第二次世界大戦後、その方法は放棄され、21世紀に委ねられている。輪読座では、そのうち、「餅」、「檄」〈げき:信義・意見を公衆に呼びかけ、決起をうながす文書〉、「金光明最勝王經」〈日本国分寺の護国呪術経典〉、「苜蓿」〈もくしゅく:地中海原産のアルファルファ、和名:紫馬肥しの伝来〉を輪読し、その方法を継承する。さらに西欧列強に加わり、軍部独裁政権へと移行する日本帝国の国民に示唆した「融合作用」に導く4篇を読む。
『蝸牛庵聯話』『力の入れる所を誤れる現代の日本人』『政治と色と音と』『評判や噂に囚はれず事実に就いて自己の判断を下せ』『融合作用の必要』
輪読とは・・・
◎輪読座への参加の心構え
- 1.予習禁止=輪読座は「無知」と「未知」を尊びます。予習の多くが先行する意見・定義の再認であって、自由な発想をさまたげる。輪読座では人が読むのを聞いて思いつく自発的意見を重視し、教科書の文言や通説、既存の学説・解釈の受け売りや代弁を禁止する。
- 2.読めない状態の参加でよい=輪読座では配布されるテキストを声に出して読みまわします。そのとき、読み間違い、読めない文字の飛ばし読み、たどたどしい読み方などをとがめない。そのたいがいに重要性はない。人が読むのを聞き、自分が読んでいるうちに発声の呼吸・調子が分かって読めるようになってきます。読み手が読めないところを聞き手の読める人がフォローすることは許可する。
- 3.疑義に発言・応答する=知らないワード・人名・地名などは休憩にネットでチェックすればよい。しかし、どうして?なぜ?が生じたら、それを提示しなくてはならない。それは既存の知識では解決できないことが多い。そのときは全員が自由に見解を発露してよい。輪読師が疑義を投げかけたら、思いつくままに答えなくてはならない。疑義や答えを誹謗してはならない。疑義や答えのフォローは許可する。
- 4.読みまわした内容の編集と発表=輪読座では、読む対象の時代状況、その内容のよってきたる所を重視し、それを輪読師が「図象」(ずしょう)で提供。「図象」では読む対象ならではの特殊な用語・術語の図示による解説も行い、内容把握の障害をできるかぎり除いて輪読をはじめる。その中間で読んだ内容を二人組で三環連結・三位一体・二軸四方などを組み合わせて図示し発表。参加者は必ず、これを実行しなくてはならない。
- 5.宿題が出る=人間は忘却の動物である。読み終われば、次の瞬間、内容を忘れる。そこで輪読の終了後、その日から一週間以内に読んだ内容を読み返さないとできない宿題が出される。その答案は輪読師が毎回提供する「図象」の型を参照して作成。そのうちの2、3の答案を、次回の輪読の開始の前に発表していただき、前回の内容を思い出して次の輪読に入る。宿題を提出しないからといって論読座への出席は拒否されない。宿題の答えを出さなければ、読んだ内容を説明できなくなることが多いが、これは自業自得とする。
日本哲学シリーズ
輪読座「幸田露伴を読む」のご案内
- 日 時
全日程 13:00〜18:00
2023年4月30日(日)
2023年5月28日(日)
2023年6月25日(日)
2023年7月30日(日)
2023年8月27日(日)
2023年9月24日(日)- 定 員
30名
- 受講資格
どなたでも、お申し込みいただけます。
定員になり次第、締め切らせていただきます。- 受 講 料
◎リアル講座:6回分 税込価格 55,000円(税込)
[参加スタイル]
2万冊の書棚空間、豪徳寺本楼で、バジラ高橋の解説を聞き、それぞれ声を出しながら輪読していきます。リアルに輪読師と質疑を交わし、図象のグループワークに取り組んでいただきます。宿題やワークの発表も用意されています。欠席された場合にも映像、資料などでフォロー受講できます。
*クレジットカードがご利用になれます。
*記録映像データ、資料などをご覧いただけます。→今期はリアル講座は受付しないこととさせていただきました。
どうぞご了承ください。◎サテライト講座:6回分 税込価格 33,000円(税込)
[参加スタイル]
各回当日に講義の様子をリアルタイムでご覧いただける閲覧URLと高橋輪読師の講義資料や輪読するテキストのダウンロード方法をご案内いたします。資料を手元に輪読座の生中継をご覧いただくスタイルです。
*クレジットカードがご利用になれます。
*記録映像データ、資料などをご覧いただけます。→受講申し込みはこちらから
サテライト輪読座は、6回にわたる講座を動画共有サイトで生中継いたします。各回の資料や課題共有は、リアルの参加者と同じWEB上のラウンジで行い、記録映像を期間中いつでもご視聴いただけます。ぜひ、遠方の方や時間の調整が難しい方のご参加も、お待ちしております。
