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編集する人々

  • 地域×編集

    一座を編集すること

    ヴァンキコーヒーロースター
    名古屋支所「曼名伽組」組長
    愛知県在住

    小島伸吾

     美術学校で版画を学んでいた頃、版画の「型」について本来的なことを知りたかった。でも「型」を語れる教授どころか「方法」を意識する美術家すら周囲にいなかった。「型」を「写す」とは、いったい何なのか? ずっと探し続ける中で編集学校との出会いがありました。
     編集稽古での学びは、個的な表現活動でなく、他者との関係において「共」的に実践されゆくものです。私は今、近代以降に失われつつある「面影」のコンセプトを研究し、方法化し、どうすれば新たな実践に移せるかに挑戦しています。これは松岡さんと同時代に生きる者の責任です。私たちの活動が次世代へのジョイントになり、職人、芸能、芸術などの世界で「面影」が共有していけることを目指します。その取り組みとして、私は他社との関係をつくるための4つの場、「店」「座」「講」「組」を作っています。
     まずは「店」。仕事場でもあるヴァンキコーヒーロースターです。ここはいわば編集を仕掛ける“装置”です。初めは店だけでイベントなどを企画していましたが、活動領域に限界があり、『ナゴヤ面影座』と『番器講』を設けました。これらの場では、講演企画、ライブ演奏、読書会、紙芝居上演などを開催しています。また、2003年の立ち上げ以来活動を続けている編集学校の名古屋支所「曼名伽組」の活性化も継続中です。
     編集学校では「もてなし・ふるまい・しつらい」を大事にしますが、イベント現場で自分なりに実践していると、入念な用意と本番での卒意の相互誘導合致を感じます。そして会の導入や閉め、転換時の「際」の重要性。他社と一つの世界を作り上げていくひとときは、「思考の速さ≒深さ」が問われる絶好の編集機会です。
     今、自分のミッションとして捉えているのは「2050年までに、世の中に何が引き継げるかということです。2000年に始まった編集学校の取り組みの延長として何ができるか。当面は『ナゴヤ面影座』において、動的な方法そのものである「座」というシステムを考え、同朋を集め、ベースづくりをしたうえで、モノづくりや表現活動を展開していきたいと考えています。
     「私」でもない「我が社」でもない「座」という生命体を社会に投じて、世の中を編集していきたいです。

  • 医療×編集

    医療も編集も、プロセスが大事

    順天堂大学練馬病院
    病理医
    東京都在住 離右筆

    小倉加奈子

     がん検査を受けた患者さんの向こう側にいるメッセンジャー、それが病理医という私の仕事です。普段は大学の附属病院の病理診断科で、患者さんの細胞や組織を顕微鏡で観察し、そして病理診断を下す「病理診断」という診療業務とともに、病理医をめざす若い先生の指導も行っています。
     医療はまさに編集です。その中でも、患者さんの主訴や検査結果等、様々な情報を集めて、分類して、鑑別疾患を順位づけし、治療法を選択していく病理診断は、とにかくすべてが編集的。細胞の「らしさ」を観察する、とびきり方法的な仕事です。
     一方で、病理医の存在はさほど注目されていません。そこで一般の方々に広く知ってもらうため、日常業務だけでなく、NPO活動で病理診断体験セミナーの企画や健康サイト等の連載で病理医の魅力を伝えています。人と病の“あいだ”にある医療は、編集の泉です。編集稽古は私に、診断のプロセスを客観的に捉えられる見方を与えてくれました。様々な世の中の出来事と医療を関係づけて思考できるようになりました。さらには、花伝所のプログラムで、後輩の指導から子育てまで、編集的なコーチングをマスターできたことで、良い意味での公私混同編集術を体得し、より発見的な毎日を送れるようになりました。
     医療も社会も、結果だけを求められがちな今だから、どれだけプロセスに注目した方法が模索できるかが大事だと感じています。便利になり選択肢も増え、方法が多様になっていく中、子どもたちが夢を持ち、大人も精神的に豊かな生活を遅れるような世の中を編集し続けていきたいです

  • 地域×編集

    対象の新しい顔に出会えるのが編集の醍醐味です

    京都岡崎魅力づくり推進協議会/ライター
    京都在住 破師範・離右筆

    福田容子

     京都の岡崎でまち歩きコースを作っています。テーマと場所と話せる人の3つを組み合わせて、土地のクロニクルから町の物語を取り出すのが醍醐味。ポイントは、いま目の前にある町の情景の中に、ただ見ているだけではわからない意味や歴史を読み取り、それを参加者にわかる物語として語り起こすこと。たとえば、周囲より一段高い一区画が実は古代寺院の基壇跡だったとか、今の美術館の場所に明治時代は輸出用の美術工芸品の商業見本館があったとか。「美術品を見せる」という「図」の要素や機能は変わらないけれど、時代の「地」が変わり施設の役割が変わる。
     「見い出す」「つなぐ」「語る」のは編集の本懐。知っているモノの新しい顔に出会えて対象への見方が変わるときが、「これって編集的」とワクワクする瞬間です。今後は、そういう「編集的発見」を体験するイベントを紙媒体にも展開する編集モデルを確立していきたいです。

     

     

    先達文庫

    シモーヌ・ヴェーユ『根をもつこと』 

    まち歩きのキモは今目の前にある風景と隠れた物語をつなぐこと

    企画編集に携わった地域のクロニクル本とARイラストマップ

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