■雛祭り開講に勢ぞろいした10人の指導陣
 2007年3月3日午前10時、松岡正剛校長の開講挨拶とともに、第3季「世界読書奥義伝」が幕開けとなった。続いて太田香保総匠と太田眞千代・相京範昭・倉田慎一の3人の別当たちからメッセージが連打。2005年の第1季以来、指南役を担ってきた顔ぶれだ。
 年に1度きりしか開講しない「世界読書奥義伝」だが、その内容も体制も毎年バージョンアップされ、季を重ねるごとに密度が増している。松岡正剛校長が本講座のために書き下ろしたオリジナルテキスト「文巻」は毎回加筆修正され、文巻中に指定される参照文献もどんどん追加されている。
 さらに、第3季は中野由紀昌・古野伸治のベテラン師範が「別番」として、第2季典離認定者であるオカムラナオエ・川島陽子が「右筆」として、若手の米川青馬が「秘書」として指導陣に加わった。「千夜千冊全集」の短歌でも活躍したスーパー師範・小池純代も特別指南役に入っている。32人の離学衆に対して総勢11人の指導陣。校長直伝プログラムならではの、破格な体制である。
 その新規指導陣たちも、別当に続いて開講メッセージを次々と繰り出し、いよいよ午前10時30分、最初の「文巻」が「万酔院」(相京別当)、「放恋院」(倉田別当)に配信された。

■明け方まで続いた「別当会議」
 [離]では毎季、開講前から期間中、数回にわたって別当が校長と顔を合わせてミーティングを行い、「文巻」の理解を深めるとともに、「課題」ごとの指南・運営方法を話し合う。第3季の別当会議では、かつて離学衆だった別番・右筆・秘書が加わったこともあり、これまで以上に濃密なやりとりが深夜まで、ときには明け方まで交わされた。

 太田香保総匠は「文巻は読めば読むほど何層もの知脈が見えてくる。校長が仕込んだ課題の意図はとんでもなく深い。第1季のころはその半分も見えていなかった」と語る。
 松岡校長が指導陣に期待していることは、稽古の指南や講評だけではない。「文巻」を成立させている編集の方法や校長の世界観を、果敢に解読することも求めている。その成果が第3季は共同学習のラウンジである「離れ」でさまざまに披露された。とりわけ川島・オカムラの「右筆文房」、米川の「秘書編纂」は、太田眞千代別当による「照覧解説」とともに、それぞれのスタイルを確立しながら豊穣なコンテンツを離学衆に提供し、おおいに刺激を与えていた。

■リアル講座「表沙汰」の濃縮還元レクチャー
 第3季[離]は「万酔」「放恋」二院の飛躍もめざましかった。多い時には1週間に20題以上もの問いや課題が出題されるという過酷なプログラムに対し、安定したリズムで水準の高い回答をし続ける学衆が多かった。また1~2週間に1度という割合で課せられる共同作業やチーム議論の活気は、校長をして「日本で一番おもしろい編集現場」とさえ言わしめた。
 
 開講から9週目の5月14日(土)には東京平河町の砂防会館でリアルセミナー「表沙汰」が開催され、二院の学衆と指導陣・校長が一堂に揃い顔を合わせた。「表沙汰」はその名のとおり、校長も別当も離学衆も「世界読書」に向かう姿勢を表沙汰にしあうための場。例年、会場は緊張感に満ち、校長からも別当からも厳しい指南や檄が飛ばされるのだが、第3季はその様相が少し違っていた。学衆たちの取り組みはすでに十分評価されていた上に、今回の「表沙汰」ではぜひ松岡校長の世界解読術を披露してほしいという強い要望が、指導陣から上がっていたのである。
 松岡校長はその声に答えて、会場の四方にめぐらした10台ほどのホワイトボードに模造紙を貼り、そこを縦横に渡って世界読書の奥義を図解しながら語るという離れ技をやってみせた。12週分の文巻が数時間に濃縮されたような超高速レクチャーだった。

 その夜は、赤坂の編集工学研究所で、校長・別当を囲んでの歓談が明け方まで交わされた。アリストテレスから戦争論まで、物語の発生からシステム工学まで、「文巻」の扱う多様なテーマをめぐって、離学衆たちの話題は尽きるようすもなかった。

■退院課題の離論、そして29人の退院式へ
 表沙汰が終わると、[離]のプログラムも残りわずか3週間。しかしこの3週間に配信される「文巻」こそが、12週間中の最大の難所となる。校長がまだ他所ではほとんど語ったこともない「科学の方法」や、逆に校長が多くの著書に記してきた「日本の方法」が、大量の課題とともに降り注ぐのである。
 その総仕上げが、“卒業論文”でもある「離論」。[離]で何を学び体得したのかを、10000字で書くというものだ。

 7月14日(土)、ISIS編集学校第17回感門之盟とともに、第3季[離]退院式が行われた。校長・別当の「離論」審査により退院認定を受けた29人が、会場の建築会館に集った。[離]の退院式の晴れがましさは、ISIS編集学校の名物ともなっているのだが、なんと第3季の離学衆たちはみずからそれを伝説化するような大胆な趣向を準備していた…。

 松岡正剛が数十年にわたりたった一人で思索し実践してきた編集的世界観は、[離]によって「世界読書」という方法として共有可能なものとなった。第3季にいたって[離]はようやく「世界読書」の夜明けを迎えたようだ。いま、およそ90人の退院者たちが「千離衆」となって集い、松岡正剛とともに、編集知の大海原に出立しようとしている。


全員退院を誓い合って、表沙汰の記念撮影。



■第三季「世界読書奥義伝」世界読書の夜明け
■第三季「世界読書奥義伝」退院認定者発表
■第三季「世界読書奥義伝」特別賞受賞者発表
■第三季「世界読書奥義伝」典離認定者発表
■第三季「世界読書奥義伝」指導陣

 



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米川秘書を書記係に、別当・別番・右筆・総匠・校長が何やら喧々諤々。
表沙汰は校長も別当も、世界読書への姿勢を
“表沙汰”にするのが決まり。
作務衣の松岡校長、白板を並べて八艘跳び。
高速図解トークを連打。
ディスカッションを見守る相京・倉田両雄。