[コース] ISIS花伝所 │OBI-1│ 輪読座

読書術レッスン OBI-1

このたび、学校図書館での講座企画のなかで作成した本の帯をエントリーする「OBI-1グランプリ特別篇」を開催しました。
開催校は、神奈川県の浅野学園様。中学1年生から保護者の方まで一緒に図書館「清話書林」で「帯」編集を楽しみました。
エントリー前に「よみかき編集」講座を通じて、本の情報を立体的にとらえ、
インプットとアウトプットを連動させる情報編集術を学びました。さて、その成果のほどは?



                                           《 コース概要 》







 





講師と帯の選考・講評は、全国のイシス編集学校の師範の中から神奈川に縁のある方3名で担当しました。

  浅野学園 図書館「清話書林」
  「よみかき編集」講座シリーズ第1回
     講師:寺田充宏師範代(編集コーチ。戸塚在住)
     講評(東担当):大原慈省師範(日本国際児童図書評議会。藤沢在住)
     講評(西担当):迫村 勝師範(横浜国立大学講師。横浜在住)

番付仕立ての選考結果と講評をご紹介します。
横綱・大関に選ばれた3名の方は帯コピー&要約に個別講評を、参加いただいた皆さんには東西両師範の総評をお届けします。
次回「帯エントリー」の作戦づくりに役立ててくださいね。



講評結果発表!!

         

 【帯講評】大きな宇宙を語るために細部の素粒子に着目した作者の方針を、見事に切り取りました。キーワードを取り出し、ホットワードと組み合わせ、軸を設定して、
     対照となるように配置した情報編集力は抜群に秀でています。原さんのコピーには、読者に訴える際に重要となるリズムとインパクトがあり、見た目もスマート
     で、ダイレクトに本の面白さが伝わってきます。要約では立ち位置を変え、苦手意識を持つ読者の視点で想像し、身近な事柄から、敷居の高い物理学の世界へと
     読者を引き込むことに成功しています。日常とダイナミックな世界を並列に置き、軽く垣根を越えさせた、型を用いた遊び心のある自由な帯編集に、
     横綱の称号を贈ります。

  

 【帯講評】「迷ったらGo!」はキャッチーでインパクトたっぷり。押しの強いコピーは堂々の横綱級です。チームくまモンの「行動力」に焦点をあてた紹介文とも
     相まって、リズムと勢いが魅力の帯作品となりました。ご当地キャラと公務員集団の組み合わせからは一見、縁遠く感じられるビジネス的効用を、
     キャラクターの伝播力とチームの行動力に見いだし、抽出、提示。読み手側の興味も大いに喚起されます。さらにチームの奮闘を窺わせるエピソードも巧みに
     ちりばめられ、軽快な筆致でも中身はぎっしりと。本と読み手との間の架け橋づくりが一貫しているところがお見事でした。
     万雷の拍手とともに横綱の称号を贈ります。

  書名:『大人はウザイ!』  名前:指田章

  【帯】
    ウザくてナンボ!?
    いいえ、それでも。

  【リコメンド文】
    子どもにとって、まさに大人は「ウザい」。身近な親、教師などの大人はなおさらだ。
    では、どうして大人は「ウザい」のか。それは、彼らが「自分たちは正しい」という根拠のない自信を持っているからだ。
    その”自信”ゆえ、彼ら大人は子どもたちを詮索し、判断し決めつけ、そして子どもの期待を裏切る。
    このように子どもに見られないためにも、自分の在り方を見つめては?


  【帯講評】歯切れの良さと余韻のあるフレーズで、外と内への双方向にベクトルを持たせ、対比で読み手をくすぐります。強気な語調に空いた穴を、
       問いかけで読者自身に埋めさせようとする、まさに大人の狡さ持った吸引力のあるコピーです。状況を俯瞰した見方でテンポよく論理的に語り、
       大人が厭がられるキーワードを用いて、理由に鋭く切り込む要約は説得力があり、頷いてしまいます。ただし、問題意識を表面化させたあと、
       果たして何がこの本で変わり、分かるのか、先に繋がる予測を提示しないと、本を手に取らせるインパクトは不足します。
       指田さんご自身の大胆なニューワードで、ウザイ大人を揺さぶるメッセージを、ぜひ加えてください。



  書名:『理系バカと文系バカ』  名前:持田有輝

  【帯】
    文系・理系 どちらも良いが、
    どうせなら両方とも得る
    “文理融合”
    してみてはどうだろうか?

  【リコメンド文】
    文系・理系のどちらかに偏りのある者、“文系バカ・理系バカ”は悪くはないが、良いともいえない。
    近年の文系・理系事情や文系・理系の長所・短所と共に、両方のセンスを備えた
    “文理融合センス”の説明・要点を明らかにして行く!


  【帯講評】文系理系それぞれの長所と短所に言及し、不足を補うだけでなく融合によって新たな可能性を示唆する本書の構造を捉えた、直球の帯編集です。
       文字の大きさを変えるレイアウトに唯一気付き、キーワードとホットワードを視覚で訴えたインパクトが秀逸でした。
       新しい状況を薦める提案型のコピーで、偏りに共鳴する読者の不足に入り込む柔軟さがあります。ただし、要約とコピーのフレーズが
       似すぎているのは平板で残念。持田さん自身の文系理系に対するイメージや、文理融合の推薦理由を加え、作者だけでない多層で多様な
       見方で本の輪郭が立ち上がると、読者にアピールする意思を持った帯になっていきます。

  書名:『中世日本の予言書―“未来記”を読む』  名前:浮田遼雲

  【帯】
    未来は、
    歴史の一部分だ。

  【リコメンド文】
    予言書とはその名の通り、未来を予言した書である。病や地震などの厄災が多くあった中世では、
    人々は彼らの不安や恐れを打ち消すために予言書を作ったのであり、これらは人々の願望のあらわれと言えよう。
    そこのことはいままで偽りとされてきた予言書が、それぞれの時代の世相を反映したものとして、直線的な歴史研究に一石を投じるだろう。


  【帯講評】「歴史」というと過去の出来事としてのイメージが一般的ですが、そこを逆手に「未来」という言葉と繋いで簡潔に言い切る帯コピーには
       新鮮味を感じます。そしてさらに『予言書』の本質をズバッと伝える力強さも併せ持っているところが秀逸でした。その『予言書』が
       誰のために、そして何のために書かれたのか。大人が厭がられるキーワードを用いて、理由に鋭く切り込む要約は説得力があり、
       頷いてしまいます。ただし、問題意識を表面化させたあと、果たして何がこの本で変わり、分かるのか、先に繋がる予測を提示しないと、
       本を手に取らせるインパクトは不足します。指田さんご自身の大胆なニューワードで、ウザイ大人を揺さぶるメッセージを、ぜひ加えてください。



  書名:『だます心 だまされる心』  名前:根本さん

  【帯】
    “だまし”それは
    自身の命を守り(野生動物)
    人生を豊かにする(人間)
    トリックでもある。

  【リコメンド文】
    だますという事は、人間が欲得のためにする悪質な行為と考えられがちだが、
    野生動物にとって自分の生存や種の保存のための重要な手段であり、人間においても手品やだまし絵
    といった人生を豊かにする意味もある。色々なだましを知ることにより、幸せな世の中になって欲しい!


  【帯講評】本書における「だまし」が魅力的な「トリック」であることが一目でわかる帯コピーは読者への訴求力の点で優れていました。
       情緒的な意味合いを想起させる「だまし」という言葉に対して、身体的、知覚的な錯覚としての意味を含ませた本書の意図が
       しっかり伝えられていて、紹介文も上々の出来映えです。ただし最後の一文の「色々なだまし」の“色々”のところが少しぼんやり
       してしまうので、ここは可能であれば何か本書から例示するなどで具体化できると、
       「だまし」への読者の関心もより一段高く引き出せたでしょう。







【総評】情報はネットワークでつかみ、大胆に動かそう
                       
 −−−−大原師範(東担当)
    
  引き込まれる帯には、手をのばしたくなるインパクトのあるワー ドとリズムがありました。凝縮されたコピーと、それを紐解く要約 がペアになり、作品のもつ情報のネットワークの概要を、読者につ かませています。コピーは鍵となる言葉に、何らかの手を加えなけ ればなりません。対象に設定した読者なら何を欲しがるかを想像し たでしょうか? 印象の強い言葉や、自ら連想した言葉を組み合わ せ、効果を考えて編集できましたか? 大方の読者は、既に自分に あるものには興味を示しません。今回はやや無難なコピーが目立ち ました。もっと大胆に展開させて構いません。すると、一行のフレ ーズにもストーリーが動き出し、読者をその場に立ち止まらせます。 要約には、自分自身の見方を忍ばせる挑戦と実験を。内容を伝え過 ぎず、未知の何かに出合える予感を醸し出すことも肝心です。




【総評】ホット&クールな編集方針を
                −−−−
迫村師範(西担当)
    
  本帯の限られたスペースで内容を要約して伝えることが、一冊の 紹介という目的上、まずは基本となります。ただし漫然とした紹介 になってしまうと、本帯作品としての特徴や面白味が見いだしにく くなってしまいます。今回、上位に選出された作品では、誰に向け て何を書くのか?伝えたい中心は何か?といった編集方針がしっか り立てられていました。帯もひとつのコミュニケーションツールと して、もっともっと大胆に活用できるように意識してみましょう。  また、キーワード抽出や例示について手薄な作品が多かったのも 気になりました。読者としてのあなたが選りすぐった言葉やフレー ズが、その一冊とあなたの後に続く読者を繋ぐ対角線となります。 ホットな読者視点からコンテンツ情報を抽出して、クールな著者視 点でのコピー、紹介文へと配置できるように、さらなる工夫につい ても是非、考えてみてください。
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