2011.6.2   [レポート]
[レポート]5月20日開催「東京参座~おいしい編集術」

 5月20日、編集工学研究所では、編集術ワークショップ「東京参座」が開催されました。仕事編集術生活編集術をテーマにした前回の「東京参座」とは趣向をかえて「編集ご賞味-お菓子でひもとく編集術」と銘打っての開催です。

“お菓子”という身近な素材を通して見えてくる編集術の世界。
今回は、ワークショップとゲストトークの様子をご紹介します。

参加者の方々は、
 「Webや文章の編集で詰まることが多いので、考えるヒントにしたい」
 「情報を整理する仕事でやり方に迷うことがあるので、切り口を知りたい」
 「[序]コースを受講したのですが、リアル型の講座も体験したかった」
 「場当たり的な営業の仕方に限界を感じ、突破口を見出したい」

というような動機をお持ちでした。

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 (校長・松岡正剛による書「東京参座」)

今回の編集術ワークショップは、
 「ポストイット編集術」
 「おかし連想術」
 「型で味わうお菓子」
の三本立て。

 イシス編集学校ではなじみ深いワークショップも、「お菓子」を添えてみることで、新たな味わいが生まれました。ポストイットを使うだけで、「メモリーズキャンディー:日本の記憶を明日に」といった企画が生まれたり、「1パックのつながり」というコンセプトが生まれるなど、みなさん、ワークショップを通して編集術の眼が動き出したようです。

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 (ワークショップの様子)

そして、実際に和菓子が登場です!
富貴草、五月花、唐衣、紅涼水、蕨餅、麦手餅、夏柑糖、干菓子などなど
お菓子たちがテーブルを彩ります。

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(テーブルに並ぶお菓子)

 しかし、お菓子を食べるのがこのワークショップの目的ではありません。
 お菓子を一つの「情報」とみなし、その情報を整理したり、並び変えたり、さらには別のものに見立てたり。編集術の基本要素がふんだんに詰まったお菓子編集術で、お腹も頭もいっぱいになるワークショップとなりました。

「妄想だって編集!」

後半は、編集学校でコーチを務める方々によるトークセッション。
まずは、赤松師範からです。
※師範は、師範代(編集コーチ)をコーチする人を指します。

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赤松木の実さん/会社経営・イシス編集学校師範

 赤松木の実師範は、大阪で開催中の「浪花参座」のインストラクターも兼任しており、さらに会社を経営されています。主にカタログの制作に携わっており、「編集」が本職の師範です。

 「先日、長野での撮影でコーディネーターを務めました。時間も予算も制約が多い中で、メンバーとの意思疎通や情報共有をしなければならず、そこで活きてきたのが編集術でした。自分の視点だけに固執せずに、第三者軸を設けて、情報を整理する。それによって、滞りなく仕事が進みました。」

私たちの頭の中は常に「編集状態」にある、という赤松さん。
編集術が、生活に欠かせないものになっているそうです。

 「編集術は自分の生活そのもの。“意識すること”は日々なくてはならない力です。意識していない頭の動きを意識させてくれる場所が、イシス編集学校なんですね。当事者である意識と、離れてみる目を行き来することで、全体を俯瞰できるようになります。」

視点を動かし、意識を向ける。
そういった日々の積み重ねを通して、編集術を鍛錬していっている赤松師範の編集的生き方が垣間見えるようでした。

 「以前、[浪花参座]にいらっしゃった方は、物語を想像し、空想することが好きな方でした。けれど、それを誰とも共有できなかった。参座のワークショップでは、その空想を単なる妄想に終わらせずに、そこから「方法」を取り出しました。そうすることで連想術や発想法などの編集術へと発展していったんです」

編集学校では、「妄想」だって思考の訓練につながるんですね。

「カウンセリングは“物語”なんです」

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大村浩子さん/セラピスト・コピーライター・イシス編集学校師範代

 大村浩子師範代は、二足のわらじをはいてらっしゃいます。一つは、コピーライター、もうひとつはセラピスト。コピーライティングのノウハウを上達させるために編集学校に入られたそうですが、結果的には、どちらの仕事でも編集術が活きていました。

 「セラピーでは複数のメソッドを使ってクライアントさんに最適なものを組み立てます。例えばアロマセラピーでは、クライアントさんに合ったアロマを調合します。オレンジひとつとっても、実からと花からでは、香りも作用も異なるので、香り・効能・香る時間など、様々な軸を立てて、分類しなければなりません。」

まず、「軸を立てる」という方法。

 「対話を通して、適切な香りを選び、調合するのですが、香りや症状は言葉では表現しにくいものです。だから、編集学校で学んだ“イメージの交換”を行います。クライアントさんが描くイメージを丸ごと受け取ることで適切なセラピーになります。」

続いては、「イメージの交換」

 「意識、体、そして心の三位一体を心がけています。それぞれに対して、言葉のカウンセリング、手技のカウンセリング(マッサージ)、香りのカウンセリングを複合的に行うことで、生命全体に調和が生まれます。」

こちらは編集思考素の一つ「三位一体」
どれも編集学校における情報編集の「方法」です。

 「編集術を用いて、クライアントさんにとっての“物語”を作ってあげています。起承転結を読み取って、さらに回復への物語を紡ぎます。そうすることで、先へ進んでいける道ができるんです。」

 そして最後には、[破]応用コースで学ぶ「物語編集術」です。小説や脚本だけが物語なのではなく、人の人生も「物語」に見立てることで編集可能になる、と大村師範代は締めくくりました。

 人の中は見えないし、将来も見えない。
 その不確実なものを編集していくお二人の話に、お菓子にとどまらない編集の奥行きが見えてくるトークセッションとなりました。

 参加された方々からは、このようなご感想をいただきました。
 「子どもと接するときに本当に必要なことは、自分の視点を強要するのではなく、子どもがすでに持っている多様な視点に気づいてあげることだと分かった。」

 「現在就職活動中なんですが、履歴書でも面接でも、たとえ他の人が同じ経験を語ったとしても、自分の軸で自分を編集することが強みになると気付きました。」

 「高齢の親の話を聞くのがちょっと億劫になってきていたのですが、視点や視座を積極的に共有し、同じ目線に立ってからコミュニケーションをとることが、相互理解につながるんだと思いました。」

 「ワークショップでうまく回答できないのではないかという不安があったのですが、その不安=不足から編集が生まれるんだと実感しました。」

 「お菓子でひもとく編集術」と題して、開催した5月の「東京参座」でしたが、お菓子だけでなく、アロマも就活も人の人生までも「編集」してしまった3時間となりました。
次回は「人を育てる編集術」。ぜひお楽しみください!

【イシス編集学校】 http://es.isis.ne.jp/
【[参座]情報】 http://es.isis.ne.jp/sanza.html