2011.4.27   [レポート]
[レポート]『東京参座~仕事を編集する』 職場に対話がサンザめく!

 4月9日に行われた第一回「東京参座~仕事を“編集”する」に引き続き、23日(土)に第二回目が開催されました。 今回も前回に続いてご好評いただき、満席の会場となりました。 

「この春から広報の仕事をするようになり、自分も変わるきっかけを作りたい」
「会社の仕事を覚えるだけでなく仕事に自分らしさを出したい」
「違った分野の仕事をするための情報の扱い方を学べないか」
「チームの問題解決に編集術を活かせないか」

など、新年度だからこその向上心・好奇心を持ってお集まりいただきました。

 このイベント内で行われた座談会「参座セッション」では、実際に編集術を仕事の現場で応用されているイシス編集学校の編集コーチの方をお招きしましたので、今回はその模様をレポートいたします。  

衝突だけがクリエイションじゃない 

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森井一徳さん/日経BP 広告プランナー・イシス編集学校師範 

 森井さんは現在、編集コーチを指導する「師範」という役割を担う一方、情報産業の第一線で活躍しており、その仕事ぶりは編集的・立体的です。 

 「現在では、紙や電子など情報の乗り物が多様化し、情報そのものの流通速度も上がってきました。両者をどう組み合わせていくかが重要になってきた中で、“編集術”が活きてきます」 

 どういう風に活きてくるのか。具体的な例を挙げていただきました。 

 「アメリカの会社に自社のリソースやコンテンツを提供するという仕事がありました。しかし、ただ単にこちらの情報を提供するだけでは相手は喜びません。自社が持つリソースを、相手の会社の視点で切りだし、“編集”を加えることで、相手にとって有益なプレゼンができるようになります。他者と向き合うときこそ、編集術は有効なんですね」 

 当日のワークショップでも扱った情報の分節化や動かし方のさまざまな方法が、実際の仕事の中で応用され、森井さんの仕事をより創発的なものにしています。 

 「さらに重要になってくるのがチームでのプロジェクトの推進です。チーム内でAとBという反対の意見が出ると、しばしば反発が起きます。しかしながら、AをA’、A”に言い換えてみる。Bも同じように、どんどん言い換えていく。するとAがBに、BがAに近づいてお互いの共通項を見出していけるのです」 

 一見相反したことが、チーム内の衝突を超えて、新たな創造につながっていく。“言い換え”編集術実践シーンを披露。

 「多くの人は、自分の意見を大事にしますよね。しかし自分が考えたことであっても、自分という主体から離してみる。アイデア、人、それぞれの要素を組み替えていくような感覚ですね。自分がオープンな状態になり、新しい発想や仲間とスムーズにつながっていけるようになります」 

 「自分」への過剰なこだわりを捨て、対話という新しい情報の価値を生み出す。この流れをマネジメントする編集術が肝となります。

 続いて、いかに編集力を高めるか、というお話しへ。

 「今回は2分とか4分とかの短時間でワークショップに取り組みましたが、時間の制限が、発想力・編集力を加速させていきます。この企画は5分しか考えない、と決めて集中するのです。そのトレーニングとして編集学校の編集稽古があるんです」 

 「とにかく仕事の仕方が変わりました」と語る森井さんは、仕事と時間を編集することで多くの案件を効率的に動かしていくスタイルを身に着けられたようです。 

 「しかしこれはノウハウ本を読むことでは実感できない。編集稽古では、自分が回答したり、指南を受けたりするため、情報が動いていきます。だから生徒にとってもコーチにとっても面白いんです」 

 編集術の実用性から面白さまで、森井さんが普段感じている編集の手ざわりごと、お話をお聞きすることができました。情報を生き生きと扱い、人と人の間を編集しているお仕事ぶりが浮かぶようです。
 

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ワークショップ会場の様子

職場がギスギスしたら、ルル三条。 

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大泉智敬さん/星野リゾート マーケティング・イシス編集学校師範 

 30歳を越えたときに、無性に勉強したくなり、ビジネス書フリークになったという大泉さん。とにかくビジネス書を読み漁った中で、松岡校長千夜千冊に出会って、読書の仕方を考え直すようになったそうです。まさに仕事のために編集術を学び始めた大泉さんの話が始まりました。 

 「私の仕事は、リゾート施設の再生や運営が主なものです。その案件に対して、まず最初に情報のデータベースが必要になります。情報を抽出することは、まさに今日ワークショップで行った“りんご連想術”なんです」

 どんなにスケールの大きい事業や案件であっても、情報編集の手順は同じです。 

 「再生中の施設に、また来ていただくためには、その原因や要素を分節化することが大切です。その施設の周辺にどんな魅力があるのか、顧客は誰なのか。そういった意味情報を組み合わせていくことで、コンセプトが立ち上がってきます。これは今日皆さんが体験した“ポストイット
編集術”が土台になっているんです」

 こういうブレインストーミングやコンセプトワークは、規模が大きいほど複雑に情報が絡み合い、その解を導きだすことが困難です。しかし大泉さんは編集学校で、情報編集の「方法」を身につけたことで、日々の仕事の中で用いる方法自体を自分で組み立てられるようになったそうです。 

 そして、話は職場の中へ。 

「人間関係がギスギスすることってありますよね。その時に考えるのが、編集術の一つ、“ルル三条”なんです。その組織が抱える問題を漠然と考えるのではなく、ルール・ロール・ツールという切り口に当てはめることで、解決の糸口が見えてきます。これが編集術の「型」なんですね。これで問題解決のスピードや深さが変わってくるんです」

 案件にも職場にも応用可能な多様な情報編集の「型」。これを編集学校では繰り返し学びます。「型」の習得で「思考のOSが変わった」と語る大泉さん。ビジネス書を読み漁っていた頃とは異なるエンジンを携えて、大きな事業にも小さな場にも編集的に取り組んでいました。
 

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師範を囲んでの「参座セッション」

 ワークショップを体験した参加者の方からは、
「もしかしたらとても難しいかもしれないと思っていたが、安心しました」
「日常何気なくやっていることを意識化するというワークショップだったので、楽しめた」
「自分と他の人の捉え方の違いに驚いた」
「言い換えを通して、情報を自分から切り離して動かしていく感覚をもっと磨きたくなった」

と、ライブな編集体験を語っていただきました。 

編集術の「方法」の入り口に触れたことを通じて、
「編集的アイデアの出し方に興味を持ったので、もっと深いベースの考えやスキルを学びたい」
「イメージが直線ではなく、『型』によって変わったり膨らんだりすることの面白さを感じた」
「思考の方法を知っているかどうかで、企画力の幅が変わっていくと実感した」

と、編集術の世界に一歩踏み出していただけたようです。 

 仕事のナカにソトに編集術を活用している師範のお二人と、初めて編集術に触れた参加者の皆さんとの「対話」から、普段はネット上にある編集学校の生きた仕組みを体感することができる「東京参座」となりました。 
皆さん、ありがとうございました!

 

新たな知の冒険へ!
【イシス編集学校】
http://es.isis.ne.jp/