2011.4.12   [レポート]
レポート]編集術ワークショップ「東京参座~仕事を“編集”する」

 赤坂の編集工学研究所で、編集術ワークショップ「東京参座」が開催されました。編集術を体感体験していただくライブイベントとして今年2月に始まった[参座]。札幌や大阪、福岡に続き、「東京参座」もスタートです。
 今回は、「仕事を“編集”する」というテーマで行われた回をレポートします。

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  松岡正剛校長による書「東京参座」

質問の花がサンザめく

 4月9日、編集工学研究所内のイベント会場には、参加者がぞくぞくとご来場。当日の申込みの方も含め会場いっぱいにお集まりいただきました。今回のテーマは「仕事」の編集。そのためかビジネスマンやデザイナー、編集者やPR関係の方など、編集術を仕事に活かしたいという参加者の方々が多くいらっしゃいました。

 「編集がどういうことかいまひとつわからなくて」
 「多角的に考えるというのがどうすればできるのかヒントをもらいたい」
 「震災の影響による社会の変化へ対応したい」
 「どこでも通用する企画力を身につけたい」
 「将来的なキャリアアップに備えたくて」

といった動機でご参加いただきました。

 情報の取り出し方を学ぶワークショップでは、実際の企画立案への応用の仕方を積極的に質問して、ご自分の仕事へ活かすきっかけを見つけようとしている方もいたり、編集の型を動かすワークショップでは、すぐにでも実践できそうなソーシャル・アクション・プランが出てきたり。
 仕事の現場で生きる編集術が参加者の方々の手によって、形になっていきました。

 80分間の一連のエクササイズを終えた皆さんは、
 「今まで使ってこなかったような頭の使い方をしたので、
 新たな視点から仕事に取り組めるようになりそう」

と語っていました。

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ワークショップに取り組む参加者の皆さん

 編集を学ぶと何が違うのか。仕事のステップアップに編集術は役立つのか。参加者の方々の疑問に答えるために、続いては「参座セッション」として、編集コーチである森美樹さん、大澤靖永さんによるクロストークが行われました。

 

編集の「型」を仕事のエンジンに

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森美樹さん/乃村工藝社プランナー、イシス編集学校師範

 森美樹さんは、博物館をはじめとする文化施設のプランニングに携わり、新規施設の展示企画から既存施設の管理運営までに関わる仕事をしています。仕事柄、マネジメントやプランニングの「方法」をどうすればメンバーに伝えられるか困っていた時期に、編集学校に出会ったそうです。

 森さんは、3・11の震災による大変化の中でいかに仕事を“編集”していったのか、という話から始めました。
 限られた情報、時間、電気。何よりメンバーが集まれない。この状況の中で、大切なコンペに間に合わせ、急場で仕事の速度をあげるために用いたのが、やはり編集術でした。

 「まずは、相互編集状態をつくること。自分ひとりで悩むので
 はなく、仲間と情報を出し合い、情報を分節化するなど編集
 作業を共有する
ことが大切です。」
という森さんの言葉には、今日のエクササイズで学んだことがそのままの形で生きています。

 さらに、多くの人が悩みがちなコンテンツ作りに関して、
 「コンテンツづくりも、手持ちの情報や中身で悩むのではなく、
 まずは『型』をつくる。そしてそれを動かしてみる。そうすること
 で、一つの情報が別の側面を見せ始めます。『型』を尊重する
 ことで、必然的にコンテンツは生まれやすくなります。」

 編集学校で最初に学習する「型」は森さんが仕事の現場をリードするエンジンになっていました。
 編集学校では、毎回「お題」という形で師範代(コーチ)から出題があり、そこに情報編集の「型」を用いて回答していくシステムになっています。森さんは仕事のプロセス上の課題を編集学校の「お題」に見立て、順にクリアしていくよう組み立てることで、どのように進めればいいか見えてきたといいます。

 「編集学校で師範代を経験したことで、自分の仕事にもコーチ
 の眼を向けられるようになり、課題を立体的に見ることができる
 ようになりました。」

 ずっと生徒のままではない編集学校ならではのシステムが、現在の森さんの多角的な視点を生み出しているようです。

 

仕事の「最適解」は方法で導き出す

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大澤靖永さん/第一法規 人事室、イシス編集学校守番匠

 大澤靖永さんによるクロストークは、営業の視点からでした。
 大澤さんは、法律関係の出版社で営業に携わったのち、現在では人材教育を担当。社内では珍しい異動だそうです。

 大澤さんは仕事のスタイルを変えなければならないと思い、編集学校に入られました。
 「お付き合いのある企業や自治体とのコミュニケーションは
 それぞれの企業文化・組織文化に合わせて、使い分けなけ
 ればなりません。その方法を磨きたくて、編集学校の門を叩
 きました。」

 大澤さんが特にお仕事で使われている編集術は「思考の軸」という考え方。
 「営業を担当している自治体が市区町村合併をしたことがあ
 ります。文化の異なる組織が合併すると混乱が起こります。
 それぞれ地域の特性に応じ、仕事のやり方だけでなく、組織
 の思考の『方法』が異なるからです。新たな方法と共有できる
 『軸』を設定することによって、コミュニケーションは円滑に進
 むようになります。」

 ここにも、編集学校が大切にする「方法」が活かされていました。
 編集学校で学ぶ「型」や「方法」は自分の理解を深めることであると同時に、他者とのコミュニケーションや情報共有を促します。情報の捉え方や扱い方に精通することで、意見や意味内容の差異を超えたやりとりが可能になるからです。

 「いつ、どの型を使う、という固定したものではありません。
 編集稽古を通じて、リハーサル記憶となったものを、その時
 に応じて動かしている感じです。」

 大澤さんは、意識して、あるいは無意識のうちに編集の「型」を出し入れしながら、仕事を“編集”し、その時、その場の「最適解」(=仮留め)を導き出す「方法」を身につけていらっしゃいました。

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お茶とお菓子をいただきながらクロストーク
 

 お二人の話を受けて、参加者の方々からは、稽古の継続のコツや仕事と稽古の両立について、実際の仕事での成功例など、たくさんの質問が投げかけられました。
 参加者とコーチとのクロストークも終わり、3時間のプログラムは無事に終了。

 参加者の方々からは、

 「編集の『型』を身に付ければ、生活も仕事も更に楽しめそう」
 「短時間の中でも自分の思考のクセや価値観を再発見できました」
 「時間をかけることがいいことではなく、忙しい中でも時間を決めて
 最適解を導くことの大切さを学びました」
 「自分がやってきたことの、『ことば化』をしなければいけない
 と実感した」
 「自分の仕事は社内で情報を共有すること。そのためには『方法』の

 共有が肝心だと感じた」
 「自分独自でバラバラな方法を編集学校で体系化する必要性を感じた」
 「本を読んでいるだけではダメ。実際に稽古することが大事」
 「情報に色をつけ、整理し、軸を立てるということは今日からでも
 実践したい」


などのご感想を頂きました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
4月18日から始まる入門コース[守]でお会いできますことを、楽しみにしております!

(25期[守]: http://es.isis.ne.jp/course_shu.html