イシス編集学校[守]基本コースには、「番選ボードレール」、
通称“番ボー”と呼ばれている期毎のイベントがあります。
[守]の編集稽古の中から選ばれた1つのお題の回答を、
受講生が
作品としてエントリーし、
「番選ボードレール同朋衆(どうぼうしゅう)」
と呼ばれる師範陣が
“目利き” となって、作品を選りすぐって講評します。
[守]の番ボーのお題は、考え出すと止まらない「即答・ミメロギア」。
松岡正剛校長の創案による、名物エクササイズです。
「ミメロギア」は、イメージの<対比>と<連想>を組合わせた編集術。
29期[守]の番選ボードレールでも、
大勢の学衆(受講生のことを学衆と呼びます)のみなさんが
ミメロギアを遊びました。
お題ごとに投稿されたたくさんのエントリー作品の中から、
入賞作品と講評の一部をご紹介します。どうぞご覧ください。
<入賞作品と講評のご紹介>
-1 ●料亭・居酒屋
●サンタ・えびす
●かまくら・つらら
-2
●図書室・理科室
●モンロー・ヘップバーン
●歌舞伎・能
-3
●新聞・猫
●偶然・必然
<解説>◯「ミメロギア考」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ 料亭・居酒屋 ★
講評:渡會眞澄 師範
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*講評*
“に”と“で”という助詞の使い分けも効いています。料亭
は特別で、居酒屋はどこにでもある場所。声にだして読むと、
音の違いがアクセントにもなりますね。
*講評*
「細そ笑む」も「抱腹」も、もとはそれぞれの客から連想し
たのでしょうか。「笑い」を地において、言葉を削いで、さ
らに料亭と居酒屋を擬人化することで、パロディアたっぷり
のミメロギアになりました。
*講評*
視覚でとらえることのできない香、カタチのない煙、どちら
も消えゆく儚さをもちながら、見立てによって浮かび上がる
情景は対をなし、読み手のなかで、ヨコにタテにどこまでも
豊かに広がっていきます。薫香と煙火。本気の遊び心があっ
たからこそ出逢えた言葉ですね。料亭と居酒屋のらしさを磨
き上げた二語に託し、味わい深く仕立てました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ サンタ・えびす ★
講評: 鈴木亮太 師範
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*講評*
Amazonと楽天。ここ十年で流通の仕組みをガラッとかえて
しまった両雄です。もちろん洋のAmazon/サンタと和の楽天/
えびすという対比もあるのですが、Amazonと楽天のビジネス
モデルのちがいの見立てとしても興味深い。
*講評*
サンタさんの髭やら肉付きやら衣装の質感やらはもう
「もふもふ」と言われてしまうとそれ以外に思いつきません。
具体的に描写せずとも「もふもふ」だけで幸せを運ぶサンタ
さんのらしさのすべてを包含してしまっているのです。
えびす様の「ぽんぽこ」がまた秀逸。「たぬきかよ!」と
突っ込みを入れたくもなりますが、たしかにたぬきっぽい
ですよねぇ。福をばらまくえびす様のらしさをぎゅっと
つかんでいるところが魅力的です。
*講評*
大きな白い袋を肩にかけたサンタさんが無垢な子供たちに
プレゼントを無事に届けて去っていくその後ろ姿。
どっしりと低い重心で構えたえびす様、そのちょっとや
そっとの力で押してもびくともしないような安定感。
この二人の素敵なおじいさんが、わたしたちが求めている
果報や僥倖を身体のどこで支えているのか、どこに蓄えて
いるのか。石森さんはそこをしっかりとつかみとりました。
*講評*
「橇に乗っている人」「釣りをしている人」ではなく、
ひらがなを使って「そりびと」「つりびと」と言葉を圧縮することで、
意味やイメージをギュッギュッと凝縮しているのですね。
「そりにのってやってきて贈り物をくれて・・・」
と長々と説明するまでもなく、この「そりびと」と「つりびと」は
物語を語ってくれているのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★ かまくら・つらら ★
講評:土弘真史 師範
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*講評*
「木琴なかまくら」、これだけだと「なんのこと?」と戸
惑ってしまいますが「鉄琴なつらら」と並ぶと……なるほ
ど納得。「かまくらって木琴っぽい!」と思えてしまう。
ミメロギアの方法の力を示してくださいました。
五感のカーソルづかい、冬の風物から楽器へのジャンプの
大きさ、切り口のソロイの美しさと、お稽古で身に着けた
編集術を活かそうとする意気も光ります。かまくら・つら
らのハーモニー、聞いてみたいです。冬奏でる銅賞を贈り
ます。
*講評*
かまくらの要素は汗、つららの要素は時。「そんな見方が
あったのか!」と一本取られた気分です。
アイダに「結晶」という言葉を挟まれたのもうまかった。
結晶いえば雪、塩、クリスタル……。その言葉にも、キラ
キラ、サラサラと、そこはかとなく冬らしさが。私はあわ
せて「不純物を除いてギュッと凝縮」というミメロギアら
しさも感じました。冬結ぶ銀賞を贈ります。
*講評*
談笑は独りではできず。そこにはかならず複数の人が集ま
り、会話がなされています。寒を避け、人が集うかまくら
らしい光景は、「微笑のつらら」とつなげることで、キャ
ラクターに変化。手品のようなミメロギアでした。
性格美人のかまくらちゃん、クールビューティーのつらら
ちゃん。厳しい寒さもなんだか楽しくなりますね。冬笑む
金賞を贈ります。
(-2に続く)