[コース] ISIS花伝所OBI-1 │ 輪読座 │
輪読座

 

 編集工学研究所フェロー 高橋秀元が、輪読と図象ワークに
よって読書を促進する輪読座を開催しています。

 近年、読書が推奨されていますが、読みたくても読めない本があります。そのような難読といわれる日本の古典を中心に、輪読師である高橋のナビゲーションのもと輪読をします。

 予習や前提知識も必要ありません。図象(ずしょう)と呼ぶ高橋が構成した“概念曼荼羅”を介し、お互いに声を出しながら輪読する事で解読力が自然とついていきます。

 2014年秋開講の『伊勢物語』からスタートした「サテライト輪読座」。 全6回にわたる講座を動画共有サイトで生中継し、テキストで輪読座の進行を共有しながらサテライト参加者からのワーク・コメント・質問等を交えて進行。 各回の資料や課題共有はリアルの参加者と同じくWEB上のラウンジで行います。
  ぜひ、遠方の方や時間の調整が難しい方のご参加も、お待ちしております。


これまでの輪読座



バジラ高橋

高橋秀元

松岡正剛と共に工作舎を立ち上げ、オブジェマガジン『遊』を世に送り出してきたコアメンバーの一人。
日本の神々について独特の解読を進め、観念の技術をめぐり執筆を続ける一方、出版や日本文化・観光・都市の研究、地域振興や文化施設などのプランに携わる。
イシス編集学校で密教のヴァジラ(金剛杵)を冠した教室を開いたことから、「バジラ・タカハシ」が仇名になっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輪読座・日本哲学史シリーズ第二弾
        「万葉集:相聞・挽歌を読む」のご案内




1.言霊を交わす「相聞・挽歌」

 4月に始まる輪読座は『万葉集』の巻2「相聞」と「挽歌」です。「相聞」とは親しい相手の消息を尋ねることで、今で言ったらメールです。それは恋する男女、別れた夫婦や友人などに歌に心情を託して伝え、受け取った相手は歌でもって応えました。とはいっても、万葉時代は住所(アドレス)が成立したばかりで、相手にメールが届くかどうかの保証はなかった。そこに心を歌に託して詠めば、相手がメールを受け取れない状況にあったとしても、挽歌ともなれば冥界に去っていたとしても必ず心情が伝わるという、いわば歌に込められた言霊が時空を超えて伝わるという「言霊信仰」が喚起されたのです。
  『万葉集』の巻2の相聞は大雀命(おおささぎのみこと:仁徳天皇)の皇后であった葛城氏の女王というべき磐媛(いわのひめ)が別れた天皇に送った五首の歌に始まり、流浪する柿本人麻呂と恋人であったらしい依羅娘子の歌々まで、挽歌は白鳳期に定まった葬礼によって詠まれ、有間皇子に始まり、元正女帝と長屋王政権の宮廷歌人・笠金村の5首に終わり、時代順に編集されています。『万葉集』の巻1が日本という国家の形成を歌々で編集したのに対し、巻2では「日本の心」の変遷を相聞・挽歌で編集しています。



2.国家の形成と一途な愛の相克

 『万葉集』の巻2の冒頭の磐媛が大雀命に送った5首の相聞歌は古墳時代盛期の王朝の命運を左右する事態を反映しています。大雀命と磐媛は応神天皇の遺児・菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)の政権と戦いました。その二つの政府の並立の中で菟道稚郎子は病に倒れ、倭国統合を願って妹の八田皇女(やたのひめみこ)を大雀命の皇后とするよう遺言して亡くなったのです。大雀命は若き日々からのパートナーであった磐媛に皇后を去れなどとは言えず、平穏に倭国を統合するには八田皇女を皇后にするしかない。
 磐媛にしてみれば菟道稚郎子の一族を武力で壊滅させる内戦をも辞せず、大雀命が愛情を貫いて自分を皇后にしておいてほしかった。これが不可能と知ったとき、磐媛は大雀命の難波宮を離れ、大阪湾から木津川を遡って筒木宮(京都府の南端:綴喜郡)に入り、菟道稚郎子支持勢力と大雀命支持勢力に抵抗を示しました。『日本書記』、『古事記』はその顛末を大雀命と磐媛が詠った心模様の歌々で歌物語のように綴っています。
 ところが『日本書記』、『古事記』では採録した歌々が微妙に異なり、同じ歌でも配列が異なっている。同じ歌でも何時、何処で詠われたかが異なれば、歌の含意が異なってきます。このあたりの編集の妙を味わっていただいてから、『万葉集』の巻2に入っていきます。『万葉集』の巻2における「相聞」は、国家の形成と家族や恋人、友人同士の「一途な愛」の相克を浮き彫りにしていたということです。


(左)倭国統合した仁徳天皇陵とされる巨大な大仙陵古墳
(中)大仙陵古墳出土の銅鏡(ボストン美術館)
(右)大仙陵古墳出土の衝角付冑の復元模型

3.法と愛と死の相克

 『万葉集』の時代は白鳳時代と呼ばれます。『万葉集』に古拙な古墳時代の歌も採録されていますが、その中核は舒明天皇と皇后の宝皇女(皇極・斉明女帝)の時代、天智天皇に続く天武天皇とその皇后の鸕野讚良(うののささら:持統女帝)、さらに『大宝律令』を公布し奈良京を造営した元明女帝、これを基盤に律令国家体制を整えた元正女帝と長屋王の時代にあります。この間、宝皇女が支えた大倭国は白村江の戦いに敗北しました。
 その後、白村江に戦った唐の高宗の皇后、則天武后が唐王朝を簒奪して国号を周としたのを好機とし、天武天皇は唐と戦った大倭国はもはやなく、日本国が成立したことを国政的に表明して日唐講和を達成し、日本国は東アジア国際社会に復帰したのです。今も昔も国際社会の一員であるためには法の整備が必要です。東アジア各国が漢文を用いて唐の律令と共通する編集スタイルの法律を定め、相互の内容に異同があっても相互理解が可能な状態にしなくてはならなかった。
 現在でも死刑廃止国と死刑容認国では刑法が異なりますが、法律の条文の編集スタイルが同じなら相互に理解し、容認したり、批判もできるわけです。これが民法ともなれば、結婚・家族制度・遺産相続・葬礼をはじめとする内容が人々の愛情を縛ってきます。とはいえ、民法は長きにわたって形成された文化を無視することはできません。唐や新羅、ベトナム、西域諸国と日本の文化状況は異なっていました。これは文化障壁になるから、その垣根を取り払って国際化しようという政策と垣根を理解してもらって文化を維持しようという政策がぶつかりあうことになります。
 東アジア国際社会に共通する「律令」という法典の様式をとっても、天武・持統政権のもとで藤原不比等が草稿し、元明女帝が公布した『大宝律令』は大いに日本的であったわけです。それでも、法律ですから、愛情から発した行為が、かつては容認されていたのに、それが罪とされることも多くなります。『万葉集』の巻2の生の「相聞」・死の「挽歌」を読むにあたって、『大宝律令』の「令」(民法)の結婚や葬儀の規定の雰囲気をつかんでおかなくてはなりません。「相聞」は「法と愛と死の相克」をも詠いあげていました。


4.仏教の心の解釈と『万葉集』の相聞・挽歌

 聖徳太子の大倭国から天武天皇の日本国への移行期に仏教美術が飛鳥様式から白鳳様式に大きく変化したことを日本の仏教美術史に触れられた方はご存知のことでしょう。『万葉集』の歌は白鳳仏とともにあった仏教哲学を反映しています。『万葉集』の最後の歌は、天平宝字3年(759)の正月、因幡守に左遷された大伴家持の「新しき年の始の初春の 今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)」(卷二十)です。この年に唐招提寺が建立され、白鳳の仏教は日本人の心の背景に沈みこみ、万葉の歌も終焉していきました。
 では万葉時代の仏教とは何か? それは5世紀の兄弟哲学者・無着(アサンガ)と世親(ヴァスバンドゥ)が整備した瑜伽唯識派を源流とし、無着の弟子の因明学(仏教論理学)を駆使した陳那の唯識無相派の哲学を中国にもたらした玄奘三蔵の仏教に由来します。これは玄奘の弟子・基(慈恩大師)が法相宗に整え、天武天皇の時代に日本の国教となりました。その象徴が薬師寺であり、興福寺です。玄奘三蔵がもたらした陳那の論理学に親しんだ万葉人にとって、はるか後世にカントが気づいた二律背反なんて常識でした。
 唯識学は“見る・聞く・匂う・味わう・触れる”といった感覚が人間の意識を形成すると考えました。何を感覚するかが重視されたわけです。この五感は迷いを引き起こす原因であって、それによって人間はああしたい、こうしたいと悩み迷う。これを「没」といいます。「没頭」の「没」です。大概の仏教は迷いを嫌います。ところが唯識仏教は「没」こそが人間の特性であり、それこそが菩薩への道を開くというのです。
 要は何に没頭するかが重要で、その選択によっては意識が大きく変革され、その先に菩薩道が開けると考えました。白鳳仏は唯識的な意識変革によって人間がなりうる仏菩薩の姿を表現していたのです。白鳳仏は持統女帝が整備しようとした全国道路網を通じて、北は奥州の横手、西は豊後の宇佐まで広汎にもたらされ、民衆の意識を変化させました。白鳳仏があるところ、唯識学ありです。万葉時代の人々は法相宗を仏教のスタンダードとしていましたから、五感が「思い」を形成するということを歌に織り込まれた文脈の基本としたわけです。それは『万葉集』の「相聞」や「挽歌」に強く反映されているように思えます。こうした白鳳の仏教も考慮しながら、『万葉集』の巻2の歌の編集に迫ります。

(左)飛鳥様式=如来蔵思想:聖徳太子時代の主尊:釈迦三尊像
(中)白鳳様式=唯識思想:天武天皇、道昭、義淵開基:薬師寺・薬師三尊
(右)天平様式=華厳思想:聖武天皇に受戒しした鑑真建立:唐招提寺:毘盧遮那・薬師・千手漢音像



『万葉集・相聞を読む』では、以上の律令と仏法・言霊と愛の四方二軸を眺めながら、『万葉集』の巻2の全歌を読み通すことを基本とします。相聞・挽歌は単に歌の表面上の意味にとどまらず、その背景の恋と死の物語なくして読み進むことができません。これは物語の連鎖編集を背景に、それを象徴する歌が連続しているのです。1つ1つの歌の背景の物語を読み解きつつ、輪読を進めていきます。

その6回は下記のように進行いたします。
 第1回 4/24(日):『日本書記』『古事記』:仁徳天皇と磐媛の歌物語の併読
 第2回 5/29(日):『万葉集』巻2 「相聞」前半:30歌
 第3回 6/26(日):『万葉集』巻2 「相聞」後半:25歌+「挽歌」前半:16歌
 第4回 7/24(日):『律令』を読む  結婚・相続などを中心に
 第5回 8/28(日):『万葉集』巻2 「挽歌」中期:35歌
 第6回 9/22(木・祝):『万葉集』巻2 「挽歌」後半:40歌

※『万葉集』の歌の輪読は、長歌もあるので歌数は読み進みによって変化します。






輪読座・参加者の声


輪読座でなければまず一人で読むことがない書籍ですよね。
図像含め横へ広がる話がとても刺激的です。
手の付けにくい本でもみんなで読むと読めてしまう。
これは予想以上に面白く続けたいです。
図像ワークもチームでやるので、コツが少しずつわかるようになり、理解が進みました(教えてもらえます)。
読みを深め、内容をイメージすることが、この場に参加しなければ絶対できなかったと思います。

募集要項

講座名 輪読座
 日本哲学シリーズ第二弾「万葉集:相聞・挽歌を読む」
日時 2016年4月24日(日)13:00~18:00
2016年5月29日(日)13:00~18:00
2016年6月26日(日)13:00~18:00
2016年7月24日(日)13:00~18:00
2016年8月28日(日)13:00~18:00
2016年9月22日(木・祝)13:00~18:00
              (終了後、修了証書授与・懇親会を予定)
場所 編集工学研究所 世田谷区赤堤2-15-3
1Fブックサロンスペース「本楼」
定員 限定30名 ※定員になり次第、締め切らせていただきます。
申込

◎リアル講座:6回分 税込価格 54,000円(本体価格 50,000円)
     ※クレジットカードがご利用になれます。(分割払い可能)
     ※記録映像データ、資料などは欠席された場合、お渡しいたします。

申込み

 

◎サテライト講座:6回分 税込価格 32,400円(本体価格 30,000円)
         
※クレジットカードがご利用になれます。(分割払い可能)

申込み

お問い合わせ先 03-5301-2213(直通)
front_es@eel.co.jp
受付時間 AM10:00~PM6:00

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