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編集する人々

  • 建築×編集

    未知に向かう場づくり

    岩田章吾建築設計事務所
    武庫川女子大学教授
    大阪在住

    岩田章吾

     建築家の仕事に加えて、大学で建築史を教えたり、こども建築ワークショップなどの社会活動にも参画たりしています。建築はクライアントと建築家のインタースコア。クライアントが喜ぶだけでは充分とはいえず、それを超えた価値を提示するが大事です。場所の歴史や文化、クライアントのこれまでの暮らしがどのように編集し新たな価値を見出すかが建築家の役割です。2011年に「えいの里保育園」(兵庫県主催・第16回人間サイズのまちづくり賞受賞)の園舎を設計した際は、「場」はつくるが子供たちの行為は規定しない建築にしようと考え、園庭をコの字型に囲む木造園舎の大屋根の下の空間は自由に走り回れる場としました。
     小さい頃からなんでも腑に落ちたくて仕方なかった。編集学校に入ったのも、大学や大学院でも満たすことのできなかった知の渇望があったから。得たものは多く、とくに[離]で出会った世界観や院の仲間からは得難い刺激をもらいました。
    建築は世界に痕跡の残す仕事です。表現メディアとしては遅くて重くて(コストが)高いという特徴がありますが、だからこそ意義がある、現代において100年、200年とモノが残るということ自体が社会という舞台の継続性を示すことでもある。道はハンナ・アレント、ヴィトゲンシュタインといった先達が示してくれている。
     今はいくつもの断続をはらみながら古代から続く歴史の物語群の一幕。時代の空気である「あいまいな既知」から解放された「明白な未知」の建築をつくっていきたいです。

    えいの里保育園

    「ちびっこうべ2014」こども建築ワークショップ

  • 地域×編集

    一座を編集すること

    ヴァンキコーヒーロースター
    名古屋支所「曼名伽組」組長
    愛知県在住

    小島伸吾

     美術学校で版画を学んでいた頃、版画の「型」について本来的なことを知りたかった。でも「型」を語れる教授どころか「方法」を意識する美術家すら周囲にいなかった。「型」を「写す」とは、いったい何なのか? ずっと探し続ける中で編集学校との出会いがありました。
     編集稽古での学びは、個的な表現活動でなく、他者との関係において「共」的に実践されゆくものです。私は今、近代以降に失われつつある「面影」のコンセプトを研究し、方法化し、どうすれば新たな実践に移せるかに挑戦しています。これは松岡さんと同時代に生きる者の責任です。私たちの活動が次世代へのジョイントになり、職人、芸能、芸術などの世界で「面影」が共有していけることを目指します。その取り組みとして、私は他社との関係をつくるための4つの場、「店」「座」「講」「組」を作っています。
     まずは「店」。仕事場でもあるヴァンキコーヒーロースターです。ここはいわば編集を仕掛ける“装置”です。初めは店だけでイベントなどを企画していましたが、活動領域に限界があり、『ナゴヤ面影座』と『番器講』を設けました。これらの場では、講演企画、ライブ演奏、読書会、紙芝居上演などを開催しています。また、2003年の立ち上げ以来活動を続けている編集学校の名古屋支所「曼名伽組」の活性化も継続中です。
     編集学校では「もてなし・ふるまい・しつらい」を大事にしますが、イベント現場で自分なりに実践していると、入念な用意と本番での卒意の相互誘導合致を感じます。そして会の導入や閉め、転換時の「際」の重要性。他社と一つの世界を作り上げていくひとときは、「思考の速さ≒深さ」が問われる絶好の編集機会です。
     今、自分のミッションとして捉えているのは「2050年までに、世の中に何が引き継げるかということです。2000年に始まった編集学校の取り組みの延長として何ができるか。当面は『ナゴヤ面影座』において、動的な方法そのものである「座」というシステムを考え、同朋を集め、ベースづくりをしたうえで、モノづくりや表現活動を展開していきたいと考えています。
     「私」でもない「我が社」でもない「座」という生命体を社会に投じて、世の中を編集していきたいです。

  • 医療×編集

    医療も編集も、プロセスが大事

    順天堂大学練馬病院
    病理医
    東京都在住 離右筆

    小倉加奈子

     がん検査を受けた患者さんの向こう側にいるメッセンジャー、それが病理医という私の仕事です。普段は大学の附属病院の病理診断科で、患者さんの細胞や組織を顕微鏡で観察し、そして病理診断を下す「病理診断」という診療業務とともに、病理医をめざす若い先生の指導も行っています。
     医療はまさに編集です。その中でも、患者さんの主訴や検査結果等、様々な情報を集めて、分類して、鑑別疾患を順位づけし、治療法を選択していく病理診断は、とにかくすべてが編集的。細胞の「らしさ」を観察する、とびきり方法的な仕事です。
     一方で、病理医の存在はさほど注目されていません。そこで一般の方々に広く知ってもらうため、日常業務だけでなく、NPO活動で病理診断体験セミナーの企画や健康サイト等の連載で病理医の魅力を伝えています。人と病の“あいだ”にある医療は、編集の泉です。編集稽古は私に、診断のプロセスを客観的に捉えられる見方を与えてくれました。様々な世の中の出来事と医療を関係づけて思考できるようになりました。さらには、花伝所のプログラムで、後輩の指導から子育てまで、編集的なコーチングをマスターできたことで、良い意味での公私混同編集術を体得し、より発見的な毎日を送れるようになりました。
     医療も社会も、結果だけを求められがちな今だから、どれだけプロセスに注目した方法が模索できるかが大事だと感じています。便利になり選択肢も増え、方法が多様になっていく中、子どもたちが夢を持ち、大人も精神的に豊かな生活を遅れるような世の中を編集し続けていきたいです

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